暁 〜小説投稿サイト〜
亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三話 弱いんです
[2/6]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
ろうと思ったが、肝心の彼が後方支援の練達者である可能性を見過ごした……。彼女の素性がばれた事は俺のミスだ。そしてヴァレンシュタイン中尉が彼女の素性に気付いたのも後方支援の練達者であるからだ。彼がスパイだからだというわけではない……。
また振り出しに戻ったか……。ミハマ少尉を責める事は出来んし、後方勤務本部への無期レンタルも撤回だな。
「それで、どうする。彼女は引き揚げるか?」
「いえ、このまま」
「このまま? 警告か……」
「はい」
キャゼルヌ大佐が顔を顰めた。おそらく大佐はヴァレンシュタイン中尉をスパイだとは思いたくは無いのだろう。しかしまだ確証があるわけではない。
「実は統合作戦本部の一部にアルレスハイム方面に艦隊を出すべきだという意見があります」
「アルレスハイムか……。ヴァンフリートだな、陽動か?」
「はい」
キャゼルヌ大佐は一瞬訝しげな声を出したが直ぐに納得したように頷いた。今現在ヴァンフリート星系において同盟軍は極秘に後方基地を建設している。出来上がるのは今年の暮れになるだろう。こちらとしてはしばらくの間は帝国に知られたくない。そこでアルレスハイムに兵を出し帝国の眼を惹きつけたいという案が出たのだ。
「キャゼルヌ大佐、ヴァンフリートの基地建設は基地運営部が担当している、補給担当部は全く関知していないと聞いていますが?」
「その通りだ。基地の建設自体、知っている人間はごく一部だ」
「具体的にはどの程度います?」
「課長補佐以上、それ以外は知らんはずだ」
「当然ですがヴァレンシュタイン中尉は知らない……」
俺の言葉にキャゼルヌ大佐は頷いた。
「それで?」
「ヴァレンシュタイン中尉をその艦隊に乗せようと思っています」
「……」
「彼がスパイなら当然帝国の眼はアルレスハイムに向きます。そして此処にいない以上、ヴァンフリートの件が知られる事も無い」
「……」
キャゼルヌ大佐がそこまでやる必要が有るのか? そんな表情で俺を見てきた。
「彼がスパイかどうかは分かりません。しかし念を入れておくべきだと考えています」
キャゼルヌ大佐が渋々といった様子で頷いた。
宇宙暦 792年 7月 9日 ハイネセン 後方勤務本部 ミハマ・サアヤ
私の隣にはヴァレンシュタイン中尉が居ます。中尉は私が情報部の人間だと知っても態度を変える事はありません。いつも穏やかに微笑みながら仕事をしています。本人はスパイではないと言っていますがこの人はとても鋭い……。本当にただの亡命者なのか、とても疑問です。
少しずつ彼の事が分かってきました。普段は穏やかな表情で楽しそうに書類を見ています。ココアを少しずつ飲みながら書類を見るのです。考え事をするときはココアではなく水を飲
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ