第74話 少しだけの過去
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施設に溶け込むように身体を透過させ始めた。絶望をより楽しむための席へと移動していく。
「此処モソロソロ用無シダナ」
******
「ら......ら、ララー!」
全速力で割と広めの実験施設を数半時間掛けて食蜂がいつもの日課とはかけ離れた息切れと力が抜けたように扉に寄り掛かかる。
すると扉が開いて、中から数名の研究者がぞろぞろと出て来た。
ノートパソコンやカルテ、まだ血が付いている注射針が妙にリアルでグニャリと現実感を喪失させる。
「あら?大丈夫かしら?」
「話しかけるな......予期していた通りの結果になったな」
ラグビーボールのような頭が今日はとても大きく見えた。
「ど......どういう......事かしらぁ?」
「......どちらにせよあの子はもう持たない」
言い終わるか否で食蜂は開いた扉から部屋の中に滑り込んだ。
「はあはあ......!?」
そこには身体から大量の血を吹き出して口から鮮血を吐いてガリガリに痩せ細った姿の骸骨のようになってしまったララが倒れている。
「ら、ララぁ!!?何があったのぉ!?」
「み......さき、さん?......あた......らしい薬の副作......用みたい......」
もはや喉でも潰されたかのようなカエルのような声に食蜂は更にぐちゃぐちゃになった脳に鈍器で殴られた衝撃を受けた。
「......酷.....過ぎるわぁ」
絞り出すように食蜂はあまりの変わりように涙を流してララに泣き付いた。
「......僕......死ぬのか......な?」
「そ、そんな事ないわよぉ!まだ他にも......」
他にも?
こんな姿になっても助かるの?
生きなくちゃいけないの?
瀕死のララが泣いている食蜂の頭を軽く撫でた。誰よりも弱くて、誰よりも優しく温かい手をしている。
「な......泣かな......いで......僕なら......大丈夫だ......から」
「ララぁ!ララ......」
「必ず......みさきさ......んを護るから......楽し......かった......すごくね......
むい......さむい」
食蜂はポケットから無我夢中で愛用しているリモコンを手に取るとララを苦しめている痛覚を『一時停止』した。
少しだけ顔色が良くなる。
「あ......りが......とう」
ララは少しだけ震えながら頬を緩めて眩しそうに食蜂を見上げた。
髪は白く染まり、咳き込む度に血を吐き出す。
ララの閉じた眼から一筋の涙がスーッと流れると機械的に眼が開き、紫色の波紋状の瞳が怪しく輝き出した。
「!!?」
すると彼の身体は正方形が重なったような黒い空間に吸い寄せられるように床に沈んで行った。
「何で......ララ!?
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