第74話 少しだけの過去
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投げ上げた。
ペットボトルはそれそれは綺麗な放物線を描き始めて、最高点に達する前に入り口の斜め上に激突して半回転しながら床の上で跳ね躍る。
............
「いっ......今のはちょーっと指が引っかかっただけだモン!」
食蜂は転がっているペットボトルを追いかけて取ろうとするが、誤って脚で蹴飛ばしてしまい発火しそうなほど汗をかきながら腕を伸ばしたまま取りに行く。
そのまま手に取ると最初の地点には戻らずに持った位置から再びアンダースローで投げ入れようとする。
簡単な道理よぉ
さっきは力が強過ぎたからあんな位置に飛んだだけ、弱くすればノー問題ぃ
しかし今度はゴミ箱の口手前で擦りもせずにペットボトルの腹部分に当たり勢い良く逆回転して跳ね返り食蜂の顔にクリーンヒットした。
「うぎゃッ!......しまっ、しまったぁ......空気抵抗を計算に入れるの忘れていたわぁ」
横で愉快に転がっているペットボトルを掴むと自身で掴んだ自慢の演算能力でリベンジをする。
後ろからクスクスと声が漏れているが負けてはならない。
才能ある人ほど笑われる事なんてザラにあるわよぉ
無情にも気合と覚悟に反比例するかのようにゴミ箱の前でワンバウンドして壁に当たり跳ね回る。
失敗じゃない
これは失敗じゃない
成功への重要な布石だ
雨乞いの儀式を思い出しなさい
あれは雨が降るまで毎日祈っていたから成功したと見做されるのよ
だから失敗じゃなくて成功への道に近づいているだけ
と何処かで見た事があるような自己啓発の文句を頭の中でぐるぐるさせながら、食蜂は物理的に成功への道(ゴミ箱)に近づいていく。
「だんだん近くなっているような」
「つ......次は絶対なんだからぁっ!!ああっ!?もうっ!」
「がんばれー」
ララはゆっくりと腰を下ろして彼女の健気な後ろ姿を見守る。
数少ない友達を眺めるだけでも辛い実験生活から少し報われるような気がした。
「集中よ。集中......」
外の世界ではこれが当たり前かもしれないし、当たり前じゃないかもしれない
友達をたくさん作って遊んだり、お菓子を食べたり、教えて貰ったかき氷も食べてみたい
友達の家に泊まりに行ってゆっくり話したいな
やりたい事、確かめたい事がたくさんあるのに僕はここから出る事も許されない
もう目線の高さにペットボトルをセットしてそのまま前のめりに落とせば入りそうな位置で生理的振動と戦っている食蜂。
ゆっくりと押し出すとゴミ箱の口で軽くバウンドするが中心に吸い込まれるようにペットボトルは落ちていった。
「は......入った!!見たララ!?私が本気を出せばこのぐらい楽勝よぉ!」
「見てたよー。みさきさん凄いね」
「そうで
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