第三十五話 臨終の床でその五
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「私は貴女達を呼ばずそして歩み寄ろうとしませんでした」
「そうだったというのですか」
「私は貴女達が怖かったのです」
「私達が」
「そうでした」
このことをだ、マイラはマリアそしてマリーとセーラにも話した。
「そのことを自分で認めたくありませんでした」
「どうして怖かったのですか」
「貴女達と違うと思っていたからです」
「ではやはり」
「私は側室の子です」
出生、まずはこのことを話した。
「王家の娘といえど側室の子、それに」
「信仰ですか」
「旧教の者です」
予想された言葉をだ、マイラは出した。そう言うしかなかったが故に。
「しかし貴女達は三人共正室の子、嫡流であり」
「新教徒であると」
「貴女達とは。違っていたと」
「そう思われて」
「中に入ることが出来ませんでした」
自分だけはというのだ。
「違う、そしてそれが為に拒まれることは」
「私達はそれは」
決してとだ、マリーは姉に強い声で言った。
「決して」
「そうですね、わかっていた筈なのです」
マイラは力ない声で妹に応えた。
「ですが心の奥でそう思い」
「そしてですか」
「私は貴女達を拒んでいました、薔薇は一つのままでした」
マリー達と違いというのだ。
「私は」
「黒薔薇ですか」
「それだけでした」
「そうだったというのですね」
「貴女達はどれだけ離れていても一緒でした」
マリー達三人はというのだ。
「それぞれの国にいても、三本の薔薇は一緒でした」
「私達は」
「いつも葡萄酒に入れていましたね」
マリーにこのことも問うた。
「三枚の薔薇の花びらを」
「はい、今もですが」
「それが貴女達です、ですが」
「お姉様は」
「そこにいませんでした」
その薔薇達の中にというのだ。
「私が歩み寄らなかったが為に」
「怖かったからですか」
「そうです、拒まれる」
歩み寄りそのうえでだ、そうなることがというのだ。
「側室の子、旧教徒であるが故に」
「私達はそうしたことは」
「しないですね」
「決して」
「わかっていた筈なのです」
マイラはこうも言った。
「そのことは」
「それでもだったのですか」
「信じられませんでした」
「そうだったのですか」
「はい」
こう答えたのだった。
「私は」
「そうでしたか」
「今まで」
それこそというのだ。
「私は貴女達を避けていました、ですが」
「それでもですか」
「今は。この時になって」
死を間近にした今はというのだ。
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