第三十五話 臨終の床でその三
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「この国からな、それではだ」
「もうお別れの時も」
「静かにおられ」
「お三方にですね」
「譲られるのですね」
「そうする、では卿達にはその場への出席とだ」
その場が何かはあえて言わなかった、そのうえで言わなかった。
「そしてだ」
「この国を去る」
「そのこともですね」
「進めていきますか」
「これからは」
「既に進めてきたがさらにだ」
これまで以上にというのだ。
「そうしていこう」
「わかりました、それではです」
「去る用意を進めていきましょう」
「心残りがあるのは事実ですが」
「致し方ありませんね」
「この国には大使が新たに来て他の外交官達も来る」
そうした手筈になっている、帝国本土の太子の父である皇帝が宮中の重臣達と話して決めたことである。
「彼等は間も無く来る」
「その彼等と入れ替わりにですね」
「我々は去る」
「そうなりますね」
「では今は」
「その用意を」
「そうしていく、後は彼等に任せる」
大使達にというのだ。
「どちらにしろ大使も送る時が来ていた」
「新たな大使がですね」
「この国に」
「ではその彼等に後は任せる」
「この国のことを」
「どうした外交をしていくのかを」
「任せる、だがこの国は少なくとも当分はロートリンゲン家のものとはならない」
このことは絶対だとだ、太子は看破した。
「ではそのうえでだ」
「はい、この国を去る」
「そうなりますね」
「そのことを進めていきましょう」
「我々は」
「退き際は今だ」
太子は背を向ける様にしてこの言葉も出した。
「無様な真似はしないことだ」
「ですね、我等も帝国の者です」
「無様な真似はしません」
「誇りある退きをしましょう」
「ここは」
「その様にな」
太子はこう言ってだ、マリー達について何もしようとしなかった。そのうえでこの国から去ることを進めていた。その時が来ていることを見極めているからこそ。
マリーはセーラ、マリアそして彼女の側近達を連れたうえでマイラの部屋の前まで来た。そして彼女の部屋の扉を身てだった。
そのうえでだ、彼等に言ったのだった。
「では」
「はい、これよりですね」
「お姉様のお部屋に」
セーラとマリアが応えた。
「お邪魔して」
「そうして」
「そうです、参りましょう」
マリーもこう応えた。
「これより」
「そうですね、思えばです」
セーラはマイラの部屋の扉を身てだ、こうも言った。
「このお部屋に来たことは思えば」
「久し振りね、しかも」
マリアがセーラに応えた。
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