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白く咲けるは何の花ぞも
一.岡豊の姫若子
一章
二.西国より来た男
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に小さく見えた。
 長曾我部家の血筋の者は男も女も長身が多いのだが、親益だけは母親の遺伝が色濃く出たのか、外見も性格も他の兄弟とは全く違っていた。

「あれは久武の馬だな。一体どこに向かうつもりだ」
「物々しい雰囲気でしたね。また戦でしょうか」
「さあな」

 どちらにしても姫若子の彼には関係のないことだ。
 立派な体躯に成長し、腕相撲でも弟たちに負けることのない元親だが、相変わらず戦嫌いでいまだに槍を握ったことすらなかった。
 そんな彼を歯痒く思う父親とは何度も衝突を繰り返したが、殴ろうが、怒鳴ろうが、反抗的な態度で睨み返して来るだけの長男に業を煮やしたのか、ここ一、二年は国親は元親の顔を見ることすら避けるようになっていた。
 しかし、そうは言っても元親も於能の夫、本山茂辰が病死したことは聞いていた。
 それに今朝から屋敷が何やら騒がしい。
 元親の口元に浮かんだ笑みを見て、親益が

「何がおかしいのですか?」

と首を捻った。

「さあな」

 この茶番がおかしくなくてなんだと言うんだ、と元親は口元の笑みを苦笑に変える。
 父親への反発心をこんな形でしか表現出来ない自分も馬鹿馬鹿しいし、尽きない争いに生涯を賭け、始終他人の土地を脅かすことしか頭にない血塗れの人生を送る父親もどうかしていると思った。

「親益。お前は俺ぐらいデカくなったら何をやってみたい。出来る、出来ないは考えずに思うままを言って見ろ」
「さあ、僕ならきっと嫁を取り、長曾我部の家の為に働くのではないかと思いますが」
「やれやれ。まあ、いいや。ひとまず城へと戻るぞ。おそらく親父が俺たちを探しに人をやるだろうからな」
「父上がですか?」
「おうよ」

 親益は今年で十四になった筈だが、まだあどけなさの残る顔に疑問を浮かべて首を捻る。
 自分がこの年頃の頃は親を恨んで鬱屈した時を過ごしていたな、と過去を振り返りながら、元親は腹違いの末っ子の頭を手のひらでごしごしと撫でた。
 長曾我部の兄弟は皆仲が良く、この腹違いの末弟のことも上三人は他の兄弟らと何ら変わらない態度で接していた。
 怒れば殴るし、それ以外のことでは一番下だから何かにつけ目を配り、庇ってもやった。
 親益の側としてはやはり正妻の子である兄達に引け目や遠慮は感じていたものの、同時に遠慮なしに接してくれる兄達に懐き、感謝の念も抱いていた。
 兄弟がこんな風に上下の隔てなく、仲良くやっていられるのも、長男の穏やかで飾りのない性格の影響が大きいだろう。
 まだ幼い親益は勿論、歳の近い実の弟、親貞、親泰の二人も口では何のかんのと言いながら、常に長男を立て、慕っていた。
 周囲に姫若子と嗤われようが自分たち兄弟だけは元親のことを信じ、庇ってやらねばならんと、どちらが兄か分か
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