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白く咲けるは何の花ぞも
一.岡豊の姫若子
一章
二.西国より来た男
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国親の右腕、吉田周孝。
 国親が長曾我部家を復興し、版面をここまで拡大させたのはこの男の助言に因るものが大きい。
 一方、前に進み出た香曾我部だが、長曾我部と香曾我部、同じ曾我部姓を持つものの、両家の間に姻戚関係はこれまでなかった。
 香曾我部の嫡子が早逝し、世継ぎを失った為、親秀は家名存続の為に国親の勧めで彼の三男、親泰を養子に貰い受けていた。
 親秀はこの時、国親の野心を疑り、家を売る気かと猛反対した兄を自分の手で殺めている。
 此によって香曾我部家は国親に降伏したものの、香美群(かみごおり)に香曾我部が持っていた領地をそのまま安堵された。
 その国親の三男、そして元親の四つ下にあたる弟、親泰も齢十八になった。
 長曾我部の男らしく、兄二人に負けず劣らずの長身、勇猛振りで、元親の思慮深さと端正な容姿、そして親貞の何者も畏れぬ男気の二つを兼ね備えた将来有望な青年だった。
 皆が香曾我部の家もこれで安泰だろうと思っていたが、ただ一つだけ問題が残っていたのである。
 その問題とは親泰自身ではなく、彼の兄、国親の長子である姫若子、元親のことだった。

「国親殿より貰い受けた我が息子、親泰も今年で十八になります。此度の本山攻めにて初陣の務めを果たさせたく思いますが、国親殿は如何お考えにございましょうか」
「……うむ、そうであったな」

 まだ頭が痛むのか、国親は額を擦りながら、そう呟き、唸っただけだった。
 当時の男子の初陣は早くて十二、三、遅くとも親泰の年齢には誰しもが経験することだった。
 ましてや親泰は槍の名手である。
 何の憂いもなく戦に出すことが出来る武士に成長したのだが、実は国親の長男、元親の初陣がまだなのだ。
 それ故に、次男親貞ですらまだ戦を経験せず、兄二人を差し置いて、いくら香曾我部に養子に行ったとは言え、三男である親泰が先に一人前になる訳にいかなかったのである。
 親泰だけではない。
 国親にはもう一人、家臣の妻に生ませた島親益と言う名の息子もいた。
 この息子も十四。
 いつまでものんびり構えていては、元親は歳を取る一方だし、下も支えているのだった。

「姫若子にも困ったものよ。笛や舞が得意でも、男では嫁の貰い手がなかろう」

 またどこかで誰かが失笑混じりの溜息を吐く。
 国親はそちらの方を睨んだが、それについては特に何も言わなかった。
 いや、言えなかったと言った方が正解だろう。
 この時の長曾我部家では元親を廃嫡し、次男親貞を家長にするべきとの意見が主流で、国親もそれは充分承知していた。
 ただ、彼にとっては出来が悪かろうと自身の子である。
 兄弟の順序を逆にすれば必ず遺恨は残るものだし、自分の子らに骨肉の争いなどして欲しくなかった。
 それに、「あれはうつけよ」と表向き
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