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白く咲けるは何の花ぞも
一.岡豊の姫若子
一章
一の2
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子じゃろ。叔父上、父上は本山とまだ戦するおつもりなんじゃろうか」

 於能の記憶が全くない弥七郎だけが呑気に明るく、そう答えた。

「さてな。しかし、戦せんことには儂らぁもこの地で安静に生き伸びて行くことが出来ん」

 頷こうともしない弥三郎に苦笑を浮かべ、戸波は眼下の香長平野を指さし、子らに眺めて見ろと言う。

「緑豊かな美しい土地じゃ。この香長平野があるから、儂らはここで田を耕し、米や酒をたらふく食って飲むことが出来る。しかし、同時にこの平野は誰のものでもなく、奪い、奪われながら、我らの祖先は代々この岡豊の地を守って来た」

 赤ら顔の戸波は厳つい顔に笑みを浮かべて弥三郎たちを振り返る。

「一度はこの地を追われ、身寄りのない身になりながら、それでも岡豊に帰り、立派にこの地を立て直したおまんらの父こそが、本物の土佐のいごっそうじゃ。おまんらはその父、国親の血を引いておる。弥三郎、おまんは父の悪い側面ばかり見ておるが、おまんの持つ大望はその父を超えることが出来るのか? おまんはそれを確信しておるから、父に逆らい、自分の信念を頑迷に変えずにおるのか」

 その先は長男である弥三郎だけを見て戸波は続けた。

「戦をするのは人の業じゃ。誰だってたらふく飯を食いたい、ひもじい思いをしたくない。皆がそう思うから他人の領地を欲しがり、襲撃する。弥三郎よ、おまんのように戦は嫌いじゃ、槍など持ちたくないと女々しいことを申すなら、おまんは俗世を離れ、仏門に下り、坊主になって泰平の世の為に経を唱えて穏やかに過ごすのが良かろう。儂はそれも有りだと思うておる。皆が皆、武士になる必要はない。お前が望むのなら、儂が国親殿を説き伏せてやる。後のことはこの弟二人にまかせろ」

 戸波の言葉を聞いていた弥五郎と弥七郎は一瞬、きょとんとしていたが、兄が連れて行かれてしまうと勘違いしたのだろう。
 二人共キッとまなじりを決すると、弥三郎の体にしがみついて叔父から兄を守ろうとした。

「戸波の叔父上! 兄上を連れて行くことはこの俺が許さん! 」
「そうじゃ、そうじゃ! 弥七郎も黙っておらんぞ!」

 二人の子に責め立てられて戸波は「困ったのう」とからからと大笑する。

「おまんら三人はまっこと仲がええのう。心配せんでも弥三郎はどこにも行かん。おまんらが弥三郎を守ってやれ」

と大きな手で二人の頭を撫でた。
 あくまで気休めに過ぎないが───。
 弥三郎も愚かではない。
 どうして叔父が自分にこんな話をするのか、その理由は大凡理解していた。

「弟らをおまんの代わりに鬼にするか、おまん自身が家を継ぎ、鬼へと変貌するのか。おまんも父に逆らう気なら、当然、名を棄て、家を追われる覚悟も出来ておろうな」

 弥三郎も既に八つ。
 自分
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