第7章 聖戦
第163話 トリステインは今
[6/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「何にしてもアンリエッタ姫とヴィルヘルムの正式な婚姻が発表されて、トリステインの北半分がゲルマニアに呑み込まれた」
この事実だけは動かし様がないのか。
あまりの急激な変わり様に、イマイチ思考が追い付いていない俺。こりゃ年末から新年に掛けての短い間にどれだけの事件が起きたのか……。
実際、現状の戦争自体はガリアに有利な形で進行しているようなのですが、俺の立場としては戦争に勝つよりも、世界の気の流れを正常に保つ事の方が重要なので……。
世界に対して現在の状況がどの程度の影響……おそらく悪影響を与えているのかを考えると、非常に頭が痛いと言わざるを得ない。そう考える俺。
しかし――
「違う」
しかし、今度は自らの右側に座る少女から、一体何に対する否定なのか分からない言葉が発せられた。
そして、
「そう、違うね」
我が弟ながら、少し世界を甘く考え過ぎじゃないかね。
……やれやれ。お姉ちゃんはあんたの将来が心配だよ。そう言わんばかりのイザベラ。御丁寧にわざわざ肩を竦めて見せて居るのは愛嬌の心算なのか?
但し――
但し、俺はあんたの弟として産まれた覚えなどないのですが。
そもそも、俺の推測の何処に甘い部分があるのか。心の中だけで少なくない反発を覚える俺。もっとも直ぐに、その考え自体が妙に子供っぽい事に気付き、少し反省をしたのだが。
そう、よくよく考えてみると、俺の知らない情報があればこの仮説は瞬間に吹っ飛ぶ類のあやふやな物に過ぎなかった。そう気付いたから。
しかし――
「矢張りシノブは無能なのです」
オマエはカトレアの存在を忘れているのですよ、シノブ。
カトレア……ルイズの姉の事か。前世で白娘子と融合させて、失った魄を補わせたのだが、彼女の魄を奪い去った存在との戦いは……。
結果、今回の人生で彼女はどうやら、その融合された状態の魂のまま転生。そして、前世と同じように魂魄に傷を……。いや、ある意味前世よりも酷い状態で俺の前に現われたのだった。
前世の俺は彼女こそがトリステインの『虚無の担い手』だと考えていたのだが……。
沈思黙考。そう言えば、カトレアが何故、風の精霊王の元に現われたのか。その理由が分かって居なかった。
おそらく何モノかに襲われて魂魄に回復不能の傷を受け、残った白娘子の部分がかつての仲間であった風の精霊王の元に逃げたのでしょうが……。
「オマエが異世界に送り出される前の日。突如国境を侵したゲルマニア軍に、アルビオンとの戦争中のトリステインは為す術もなく敗れ、王都トリスタニアは反乱を起こした旧教に属する貴族連中が掌握」
中でも貴族はおろか、一般的な民衆にも嫌われていたマザリーニ枢機卿の邸宅には多数の投石が行われ、見る
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ