第7章 聖戦
第163話 トリステインは今
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娘が居るが、彼の大公は一時期反逆者の汚名を着せられている。
いや、違うな。知っている人間は知っている。それが汚名などではない事を。オルレアン大公が王位を望み、その為に多くの空手形を切り、その約束を信じて彼が王位に就く事を支持したガリア貴族たちが多数居た事を。
つまり、このオルレアン大公の娘には実家の後押しがゼロ。更に、ガリア国内にオルレアン派と言う貴族の派閥が存在したのは過去の話。有力貴族の大半が既に彼岸の彼方に旅立ち、表だってオルレアン大公の遺児シャルロット姫の後押しをする貴族は存在しない。
彼女の後ろ盾と成っているのは、表向きにはマジャール侯爵。しかし、少し見る目がある人間ならば、本当にオルレアン大公家当主シャルロットの後ろ盾は現ガリア王ジョゼフである事は簡単に見抜く事が出来ると思う。
その理由も直ぐに察しが付くレベル。要はオルレアン家と現王家が王位を巡って争う事に因って乱れかけた国内をもう一度まとめ上げる為。そして、その役目は既に終わっている事も簡単に分かるでしょう。
そして、旧教は生きている間に離婚する事を禁じているが、新教に関してはそのような戒律はない。
……と言うか、シャルロット姫と王太子ルイは未だ結婚した訳ではない。
つまり、トリステイン王家と言う高貴な血筋と、未だ衰えていない実家の後押し。今現在アンリエッタ女王が持つ物、これらはかなりの武器になる。……そう考えたトリステイン南部の貴族連合に因って、無期限延期状態となっているゲルマニア皇太子ヴィルヘルムとの婚姻を破棄。新たにガリア王太子ルイとの婚姻を画策しようとする一派が現われたか、その危険性を危惧したゲルマニアがアンリエッタとヴィルヘルムの婚姻を急いだ可能性はある。
その証拠となるには少し根拠が薄いような気もするが、無期限延期状態となっていたアンリエッタとヴィルヘルムの婚姻の儀の日取りの発表が為されていなかった事が挙げられると思う。
流石に王位を持つ者同士の結婚式は盛大になる物だし、これほどの相手同士なら招かれる連中も各国首脳クラスとなる。まして、ロマリアから教皇自らがやって来たとしても不思議ではない。
しかし、少なくとも去年の年末。俺がこの世界に居た時点までそのような発表はなかった。これはかなり異常な事態だと思う。
特に、今険悪なガリアとその他の国との間柄なのだが、こう言う場に招いて、その場でトップ同士……は流石に難しいけど、少なくとも王太子ぐらいは呼び出せると思う。その次期王たる王太子ルイと皇太子ヴィルヘルム、更に運が良ければ教皇聖エイジス三十二世との間で会談が持てる可能性はある。
そのようなトップ同士が直接会話を交わす事によって関係が改善された例は歴史上枚挙にいとまがない。
しかし現実には――
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