一章 小さき魔物 - 海竜と共生する都市イストポート -
第15話 共生都市
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ドウは先ほどの市庁舎での面会を思い出す。
約束なしの突然の訪問だったが、副市長はシドウとティアの話を聞いてくれた。
その丁寧な態度からは、やはり多少の敬遠感はあった。だが、真剣に聞こうという気はたしかに感じられた。
シドウはあまり弁が立つわけではない。だが、一生懸命に、話した。
シーサーペントの生態について。水循環や生物濃縮について。
あのシーサーペントがどんな立場で、そしてどんな思いで港に来ていたか。
頑張って伝えた。
また、この都市とシーサーペントの関係についても、思うところを伝えた。
人間が登場するずっと昔からこの世界に存在していた海竜、シーサーペント。港湾都市イストポートが誕生してからも、特に介入してくることもなく、じっと人間の都市の発展を見続けてきた。
そして人間のほうは、海の最強生物シーサーペントがいる海域で、安全に漁をおこなうことができた。人間にとっては、海での活動を助けてくれていた存在だ。
つまり、このイストポートは、海竜と共生し、海竜に守られていた都市でもあったとも言える。
それを軽視して一方的に関係を解消するようなことがあれば、想像もつかないような大きな問題が起こってくるかもしれない。
そして毒物については、海産物を利用する人間にも生物濃縮の影響は出てくる。
今回のように、海の生態系の頂点に君臨する生物からメッセージを出してきてくれたことは、むしろありがたいと思わなければならない。
今後同様の事態が起こった場合は、共用語を理解できる冒険者を通訳として、できるだけ謙虚に対話してほしいとお願いした。
「あなたはこの都市のために戦ってくれました。この都市として、恩人の言うことを無下にはしない。かならずこの先、あなたの言うことを市政に反映させると約束しましょう」
そのような副市長の力強いコメントからも、手ごたえは感じた。
もう同じような事件は簡単には起きないだろう。
「あの死んだシーサーペントも、ちょっとは浮かばれるのかな、と思うよ」
シーサーペントは高い知能を持つ。
人間とやりあえば自身が死ぬであろうことは、十分に予想できたはずだ。その覚悟を固め、それを家族にも伝えていたに違いない。
そうでなければ、あの死に際の潔さや、そしてピヨピヨの母親が「後は頼む」と言っていたことの説明がつかない。
あらためて、あのシーサーペントの死が無駄にならなかったことは大きい。
シドウはそう思った。
「まあ……殺した張本人である俺に、そんなことを言う資格があるのかはわからないけど」
「ほらほら泣かない泣かない」
「泣いてない」
ティアが右手で背中をさすってきたので、シドウはそれを引き剥がして抗議した。
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