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真田十勇士
巻ノ八十 親子の別れその十一

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「はじまらぬであろう」
「はい、確かに」
「ではそちらも楽しませてもらいます」
「酒もまた」
「そちらも」
「ではな、今宵は飲んで食ってな」 
 酒に鍋をというのだ。
「戦の為の精をつけるぞ」
「さすれば」
「楽しもう」
 是非にと言うのだった。
「よいな」
「はい、それでは」
「鯉も野菜もどんどん鍋に入れて」
「そしてですな」
「食いましょう」
「酒も飲みましょうぞ」
「そうする、そしておそらくじゃが」
 幸村は目を光らせてこうも話した。
「兄上は城攻めには入られぬ」
「若殿はですか」
「この城には、ですか」
「来られませぬか」
「おそらくじゃがな」
 それでもというのだ。
「中納言殿が許されぬ」
「それは、ですか」
「どうにも」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「それはな」
「中納言殿といいますと」
 ここで言ったのは筧だった、彼が言うには。
「律儀な方とは聞いています」
「しかしこの度が初陣ではなかったか」
 霧隠は仲間内で問うた。
「そうではなかったか」
「政はそれなりの方の様じゃが」
 海野も言う。
「しかしな」
「初陣ではな」
 どうしてもとだ、由利は言った。
「何万もの軍勢を使いこなせるか」
「そして上田の城を攻め落とせるかじゃな」
 穴山には絶対にそうさせない自信がある、だからこそここまで言えるのだ。
「果たして」
「まあ最悪少しの軍勢で城を囲んで主力は進めばよい」
 望月はこのやり方を述べた。
「この城が中山道にあろうとな」
「はい、中納言殿は内府殿の軍勢にご自身の軍勢を合流させることが第一です」 
 伊佐は至って冷静に述べた。
「戦の場において」
「ではこの城に構うことはないのう」 
 根津はあっさりと述べた。
「囲んで城の中の兵を動かさねばよい」
「では大した戦にならぬか」
 清海は義兄弟達の言葉を聞いて考える顔になっていた。
「この城では」
「ううむ、久し振りに大暴れ出来るかと思ったが」
 猿飛はかなり残念そうである。
「それはないか」
「いや、この城に来てもらう」 
 秀忠の軍勢はとだ、幸村は十勇士達にはっきりと言った。鍋と酒を楽しみはじめつつ。
「軍勢全てをな」
「では、ですな」
「中納言殿の軍勢を内府殿の軍勢と合流させぬ」
「そのうえで内府殿は治部殿と戦ってもらう」
「そうお考えですか」
「そうじゃ、北陸の前田殿は義父上が進ませておられぬ」 
 家を分かれさせてしかも北陸の多くの家に邪魔をさせているのだ、そうして前田家の軍勢も家康と合流させていないのだ。
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