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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二話 監視役
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げています。手に書類を持っているが読もうとはしません。やがてクスクスと笑い始めました。
「あの……」
声をかけても中尉は笑いを止めません。こちらをおかしそうに見ています。
「あの……、バレました?」
思い切って小声で尋ねると中尉は笑いながら頷きました。そして中尉も小声で話しかけてきました。
「補給担当部でも基地運営部でも後方支援には変わりはありません。それなのに少尉の仕事振りは後方支援の人間としては失礼ですが御粗末です。元は後方支援とは無縁の職場ですね」
バレてます。私が情報部の人間だと言うこともわかったでしょう。
「私には隠す事は有りませんから自由に調べてください、遠慮は要りませんよ。それと貴女の上司にも報告したほうが良いでしょう。そうじゃないと私と通じたと疑われますから」
そう言うと中尉はまたクスクスと笑いながら書類の確認を行い始めました。通じたって、私が中尉に情報を漏らしたって事? それとも男女の仲になった? 思わず顔が熱くなりました。どうしよう、バグダッシュ大尉になんて言えばいいのか……。
宇宙暦 792年 7月 7日 ハイネセン 情報部 バグダッシュ大尉
「どうした、ミハマ少尉」
『あの……』
スクリーンに映るミハマ少尉は顔を赤らめてモジモジしている。連絡を入れてきて何をやっている。ヴァレンシュタイン中尉に告白でもされたか? 全く男の一人や二人あしらえなくてどうする。
「少尉、はっきりしたまえ、何か有ったのか?」
『あの、……ました』
小声で言うな、聞こえんだろう。
「はあ、今なんと言った? もう少し大声で言え」
『バレました!』
馬鹿、でかすぎだ。
『私が情報部の人間だとヴァレンシュタイン中尉にバレました。中尉は隠す事は無いから自由に調べてくれとの事です。上司にもそう報告しろと言われました』
全部話してすっきりしたのだろう。顔が晴れ晴れとしている。
『あの、これからどうしましょう?』
どうしましょう? 僅か四日で素性がばれる情報部員に何をどうしろと言うのだ。いっそこのまま後方支援に無期レンタルにするか? キャゼルヌ大佐も喜ぶだろう。
「少尉、任務は継続だ。監視役がそこに居るという事が大事なのだ。中尉にも警告になるだろう。決して気を緩めず、任務に励みたまえ。それとキャゼルヌ大佐の好意に応えるためにも日々の業務にも励むんだ。分かったな」
『はい』
ミハマ少尉が嬉しそうに頷いた。多分自分が首にならなかったと思って安心したのだろう。まったく、あのドジっ娘(こ)なら相手も騙されるだろうと思ったのだがそうはいかなかったか……。
エーリッヒ・ヴァレンシュタイン、スパイかどうかは未だ判断できないが、かなり出来る奴だ。こちらに報告しろと言ったのは本気でか
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