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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二話 監視役
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だがそれがなんなのか……。カストロプ公は強欲な男だ、おそらくは財産、利権、賄賂が何らかの形で絡んだはずだが、俺の両親がその何処に絡むのか、さっぱりだ。帝国ならともかく、同盟では探る手段は無い……。情けない話だ。

ミュラー、元気でいるか。今は何処にいる、オーディンか、それともフェザーンか……。お前がフロトーを撃ち殺してくれたから俺は生きている。そうでなければ俺は死んでいたはずだ。感謝している。

お前は自分が証人になる、フロトーが俺を殺そうとしたことを証言すると言ってくれた。でも駄目だ、相手はカストロプ公なんだからな。平民の証言など揉み消されてしまうだろう、その命もだ。お前を死なせる事は出来ない。

別れる時、俺は決してお前のことを忘れないと言った。お前も同じ事を言ったな、ミュラー。だがな、そんな事は駄目だ。俺は味方を撃ち殺して亡命する裏切り者なのだ、直ぐに忘れろと言った。泣きそうな顔をしていたな、ミュラー。ミュラー、そんな顔をするな、お前は鉄壁ミュラーと呼ばれる男になるんだ、そんな顔はするんじゃない……。



宇宙暦 792年 7月 7日 ハイネセン 後方勤務本部 ミハマ・サアヤ



ヴァレンシュタイン中尉が補給担当部第一局第一課に配属されてきました。予定通りです。私はこの一ヶ月半の間、此処で後方支援担当士官として研鑽を重ねてきました。決して覚えの悪い士官ではなかったと思います。

ヴァレンシュタイン中尉は当初私の指示を受けながら作業を行なっていましたが、あっという間に私の指示無しで仕事をするようになりました。中尉の話では、帝国も同盟も補給のやり方そのものは変わらないそうです。最近では私のほうが指示を仰いでいます、その方が仕事が速く済むんです。

穏やかな笑みを浮かべながら書類を確認していきます。楽しそうに仕事をしている。私の仕事は彼の監視なのですが、それでも楽しそうに仕事をしている中尉を見ると心が和みます。とてもスパイには見えません。

配属後、二日もかからずに彼は第一課の女性職員から受け入れられました。彼が亡命者だと言う事はまったく問題になりません。女性職員達の評価は真面目で仕事も出来るし、性格もいい。笑顔が素敵ではにかんだ顔も優しく微笑む顔も甘党でココアが大好きなのも全部素敵……、そう言う事でした。おかげで一緒に居る事が多い私には視線がきついです。

「ミハマ少尉、少尉は以前何処にいたのです。最近異動になったと聞きましたが?」
「以前は基地運営部です。此処へは五月の中旬に異動になりました」
「五月の中旬ですか……」
嘘ではありません、少なくとも人事記録上はそうなっています。ミハマ・サアヤは士官学校卒業後、基地運営部に配属、その後補給担当部に異動になった……。

ヴァレンシュタイン中尉は小首を傾
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