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フロンティアを駆け抜けて
子供たちの決意
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れる時間は少なく、ルビーの苦しみをすべてなくせないことはジェムが生まれるころにはわかっていた。それでも私は、みんなを笑顔にすることを優先した」

 ルビーが何かジェムに説明しようとしたが、サファイア自らが制止して説明した。だが、それはジェムとって十分な説明ではなかった。父親が掲げ続けたみんなを笑顔に、という言葉が凄く遠くの空虚な言葉にさえ聞こえた。ここでジェムは、物心ついてから初めて父親にはっきり怒りを覚えた。

「じゃあ……じゃあお父様の言う『みんな』って誰? 『みんな』の中にお母様は入ってないの!?」
「……そうだとも言えるし、そうでないとも言える」
「それじゃわかんないよ……!」

 ジェムは自分の父親を睨もうとした。でも父親の魂を吸い込んでしまいそうほど青い瞳と目が合うと、どこか落ち着かされてしまう。ジュペッタが感情を喰うように、怒りが奪われてしまう。

「私の言う『みんな』とは……私のポケモンバトルを見る人たちのことだ。観客席のお客さんや、ジェムのようにテレビで見る人たちのことだ。

昔旅立つとき、チャンピオンになるとき、私は誓った。ポケモンバトルでみんなを笑顔にしてみせると。作り物や八百長ではない、本物のエンターテイメントを作り上げて見せると。だがそのためには弛まぬ研鑽が、幽かずつでも確実な進化がなくてはならない。だから私は仕事以外でも、自分と自分のポケモン達を鍛え続けなければならなかった。だから、ルビーの傍にいてやれる時間はあれが限界だった」

 チャンピオンの座を狙うトレーナー達の強さはジェム自身が思い知った。それを退け、チャンピオンであり続けるための努力は並大抵ではない。ましてはそれを見る人を笑顔にすることを考えるなら、ただ勝つだけではだめだ。幽玄で、優雅な勝利を求めるには、圧倒的な力が必要なのはわかる。

「だからお父様は……お母様のことは自分の夢を叶える邪魔にならない範囲でしか傍にいてあげなかったし、関係ないアルカさんのことは気にかけなかったってこと……?」
「……そうなる。ジェムとルビーの関係がどこか歪なことにも気づいていたが……それはジャックさんに取り持ってもらうよう託すことしか私には出来なかった」

 静かな声は、あらゆる意味で嘘偽りがなかった。サファイアは心の底からルビーとジェムを大事に想っているし、大事な人のためにしっかりと手を打っている。でもそれは、どこまでも自分の理想に支障をきたさない範囲でだ。
 どこまでも優しくて、どこまでも理想を実現して、どこまでも正直な一人の男を……やっぱりジェムは、嫌いにはなれなかった。むしろより一層そのすごさを理解する。ルビーが一旦代わりに弁解しようとしたことから納得はしているであろうことはわかる。チャンピオンの凄さを噛みしめて、そ
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