一章 小さき魔物 - 海竜と共生する都市イストポート -
第14話 母親
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はピヨピヨを両手でつかむと、シドウとティア、それぞれの顔に近づけていく。
ピヨピヨは二人の顔を舐めた。
「ほら、ピヨピヨもげんきだしてっていってるよ」
「慰めてもらっちゃった……ありがとう。ほら、シドウもあんまり暗くなってるとよくないよ。もう泣かない泣かない」
「だから泣いてな――」
今度は、海のほうで非常に大きな波の音がした。
このあたりの海はいつも穏やからしいので、明らかにイレギュラーな音。
この場にいる全員が、一斉に海を見る。
「……!」
「えっ?」
しかし、驚いたのはシドウとティアの二人だけだった。
首を出し、そして近づいてきたのは、成体のシーサーペントだった。
港に来ていたシーサーペントと、同じくらいの大きさ。
だが頭部にツノがない。しかも全体的に少し丸みを帯びているように見える。
「ピヨピヨのもうひとりのおやだ」
少女のその言葉で、シドウは理解した。
死亡したシーサーペントは父親のほうで、いま目の前にいるのは母親なのだ、と。
その成体シーサーペントは、波打ち際にかなり近いところまで来て、止まった。
シドウは立ち上がり、吸い込まれるように波打ち際に寄っていった。
「あなたは、母親……なんですね……?」
魔王軍の共用語でそう問いかけるシドウに対し、シーサーペントは答えなかった。
ただただ静かに、シドウを見下ろしていた。
「復讐に……来たわけでは、ないんですね……」
シーサーペントの目に、殺気などはなかった。
むしろ、上から包み込むような、温かく穏やかな瞳だった。
「俺は、どうすれば……いいんですか」
シーサーペントはその質問にも、そのまま見つめているだけだった。
しかし、
「お願いします。教えてください」
という懇願を聞くと、口を動かした。
「あとは――」
「あとは……?」
「頼む――」
「……!」
シーサーペントは共用語でそれだけを言うと、今度はシドウから少し後ろに視線を外し、小さな声を上げた。
すると後ろからピヨピヨがやってきて、シドウの右手をペロリと一舐めすると、海にいるシーサーペント――おそらく母親の元に、戻った。
そして、親子そろって、波打ち際から離れていった。
いつのまにか波打ち際にやってきていた子供たちから、「バイバイ」「またね」と挨拶が飛ぶ。
ピヨピヨはそれに対し、振り返って小さくジャンプすることで答えた。
「そうか……」
シドウは一つの結論に達した。
「ティア」
「うん?」
ティアも立ち上がっており、シドウのすぐ後ろにいた。
「これから市庁舎にもう一度行ってこよう」
「いきな
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