痛々しき出会いと変化
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後
「じー……」
「えーと、こんにちは?」
数十秒後。僕とヨハネ(?)とかいう女の子は未だに木の上から動かず、見つめあっていた。どちらかいえば彼女が俺を観察しているだけのような。
「一つだけ訊かせて。あなた……何者なの?」
なんてことだ、ヤバそうな質問が飛んできてしまった。僕はここで確信した。この娘――中ニ病患者だ!
「に、人間です」
「嘘、ねぇ……そんなはずはないわ」
「ぇぇぇ」
しかも答えてみたら通じなかった。どうすればいいんだ。昼休みが終る時間がおそらくかなり近くなってきているし、できればうまいこと解散したいのだが――
「むむむ……」
彼女が凄い一生懸命な眼差しを向けて僕を観察……いや、もはや監察している。唸ってまでいるぞ。とても逃げられそうにない。
こうなればやけくそだ。僕は恥を捨てて、話を合わせるべくキャラを演じることにした。ノーマルにやっていては彼女に通用しないので、テンションは痛々しい仕様で。
僕はドスを効かせた声を心掛けつつ、頭に浮かんだセリフを綴るようにして言い放った。
「もういい埒が明かん……よくぞ只者でないと見抜いたな。そうだ、オレは人間などでは断じてない」
「っ、やっぱり……漸く正体を告げる気になったのですね?」
うわぁ辛い。何をやっているんだ僕は。ってヨハネさん、どうしてそこで緊張感溢れる顔つきで受け答えてきちゃってるんですか。余計精神にこたえるっての!
自分の中の何かが崩れるのを実感したが、もうここまできたらやりきるしかない。僕は続々と意味不明な単語を紡いでいく。
「まあ、不本意だがなぁ……フフフフ……ハハハハハッッッ! 人間の姿は形代にすぎない。余は――異世界である“暗黒界”より遣わされた第一級魔剣士、ダークネスドレッドだ!」
「……」
一応やりきった。そして二度とやりたくない。さて、誤魔化せたかどうか。僕はヨハネの様子を窺ってみる。
ヨハネは俯いて押し黙っていた。そのため表情はよく認識できないが、ひょっとしたら……。
――――スベったか?!
冷や汗が伝ってきた。患者の彼女に引かれたら、こちらの面目は丸潰れじゃ済まない。一生の黒歴史となる。
と、ヨハネが顔を上げた。彼女はなんと――
キラキラ目を輝かせていた。
「カッコイイ!!」
「え、待って」
彼女はしゃぎだして、ずいっと僕の方に詰め寄ってきた。話を合わせることができたのはいいが、効果が大きすぎたらしい。……いい匂いがした。
「剣士って、ソードとか持ってる!?」
「いえ、えっと、あのですね」
彼女が滅茶苦茶ご機嫌になってしまった。これでは距離を取るのが
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ