痛々しき出会いと変化
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かえってさっきより難しい。というか、顔がどんどん近くなっている。流石に無いとは思うが、万が一のことがあったら大変だ。勢いあまって唇でも触れあえば、僕の能力にヨハネが侵されてしまう。
一旦落ち着いてもらわねば。僕は必死に出任せを叫ぶ。
「は、離れろ! よ……余の周りにはダークマターが浮いているんだ、下手に接近していたら貴様はそれに当たって消し飛ぶぞ!!」
「な、なんですって!?」
――マジですか。すんなり信じちゃったよこの娘。純粋かよ。
ヨハネは真っ青になって、さっと後ろに退いた。
が、それがいけなかった。二人同時に上っているので、木に安定して乗っていられる面積は既にだいぶ狭くなっていたのだ。つまりヨハネが飛び退いた先は――空中だった。
「えっ……!!?」
浮遊感ゆえだろう、ヨハネが素っ頓狂な声をあげる。僕はその時には動いていた。足からならともかく、背中から落ちたなら助かるかどうかわからない。
「ヨハネ、掴まれっ!」
恐怖のせいか、スローモーションのように全てがゆっくりになった気がした。ただ、考えている暇は皆無。ヨハネは確実に下降していく。僕は全身全霊の力で両手を伸ばす。
――くそっ……間に合えぇぇぇぇぇ!!
次の瞬間、手に温かみ。
「ひぇぇ……」
下を覗くと、泣きそうなヨハネが僕の右手を両の手でがっちり握ってぶら下がっていた。
「うお……よかったぁ」
僕は安堵した。最悪の結末は免れたのだ……。
●○●○●○●
その後木から下りて、
「大変な目に合わせてしまってごめんなさい!!」
僕は盛大に土下座した。ヨハネはやめてと言ったが、そういう訳にはいかない。一歩間違えば大変なことになってたのだから。
「ホント、お願いだから顔上げて」
「……」
見上げると困り果てたようなヨハネ。ますます罪悪感を抱いたが、渋々立ち上がる。彼女は僕が土下座をやめたのを確認して溜め息をつくと、ジトっとした目つきで睨んで咎めた。
「あなたは第一級の魔剣士なんでしょ? だったらもっとどーんとかまえてなさいよ!」
「ゑ?」
目を丸くしざるを得なかった。まさかこんな部分を怒られるとは、そう思うぐらい説教の内容は拍子抜けなモノだったのである。しかし今度はその鋭い目を逸らすと――ヨハネはぼそっと呟いた。
「……けどあなた、さっき私のことヨハネって呼んだわよね。その……嬉しかった」
「はい?」
一体どこに喜ぶ点があったのかわからず、眉を寄せる。ヨハネは瞳を微かに潤ませ、さらに小さな声で続けた。
「初対面で私をヨハネって呼んだ人、実はあなたが初めてだっ
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