懸念はあてになるけど、能力は何のあてにもならないよねぇ?
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、くだらん」
ソファーに寝そべったままの体勢で僕はぼやいて手前の机にあるチャンネルを取り、決定的シーンが到来する寸前に液晶のチャンネルを変えてやった。
「ほんっとキスとかロクなことがないよなーっ!!」
真上の天井に向かって愚痴を吐く。誰からも返事はない。虚しい。
「松浦果南、ねぇ」
やっぱりだった。あの時、おかしいと思ったんだよ。松浦さんは顔を赤らめていた。
僕の懸念は大的中。松浦さんは答えた、『君と一回だけね』と照れくさそうに。ショッキングなのはもちろんだったが、そういう気がなくとも後々になって何度も脳内再生してしまうぐらいにはドキッとしたぞあれは……いや違うそうじゃない、今は懸念のことを考えているのだった。
すなわち、懸念とは能力の解除忘れ。僕は幼少期に色んな人へ能力をかけてきた。最後にはきちんと戻した。しかし違った。「戻した」と思い込んでいただけだったのだ。
要するに松浦さんのみ解除するのを忘れていたのだ。惚れ効果を解くにはもう一度キスが必要だが……彼女が『1回だけ』と言ったということは、かかったまま今日まで疎遠になっていたということになる。えらいこっちゃ。
かなしいかな、たぶん松浦さんこそが僕のクソ能力のファースト犠牲者である。きっと幼稚園での友達とは彼女のことだ。さっきふと出くわしたときは成長していたものですぐにはわからなかったがな。
「もうやだ。超絶引っ越してぇ……」
世界の裏側まで行ってこの絶望を叫んでやりたい。どうしたらいいのだ。曜ちゃんのこともあるというのに……。僕はちょびっとだけ体を起こして机上のポテトチップスをつまむ。乱れたメンタルのせいであまり美味しく感じない。塩気がむしろうざったい。
途方に暮れそうになるのを抑え、今度はスマートフォンをいじりだす。これは能力関係とは別件だ。
「……学校もまだだったな、どうしようかなぁ」
僕は2週間ほど前から他の問題も一つ抱えてしまっている。それは高校のことだ。もちろん、ちゃんと通っている学舎はあったのだが――
いじめられていた奴を助けるべくいじめっ子の嫌味な策略をぶち壊してやったところ、そいつの母が学校へ訴えてきて(おそらくは逆上したいじめっ子が自分に都合良い展開へ運ぶため親へ泣きつく演技でもしたのだろう)、僕は最終的にうまーくはめられ、からっぽの重罪を背負うことになり……様々なレッテルも張られ、挙げ句退学処分になったのである。
『彼はすごく危険な人物なんです! 謝罪を受けたのでこらえようとも考えましたがやっぱり我慢できません!! 私には娘もいるのですが、実は彼、この間うちの子に手をかけようとして……』
とかいうご丁寧な細工で、僕は
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