生まれつきの特殊能力だぁ? ロクなもんじゃないよね!
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いいや。僕はビジュアルといい学力といい、そこら辺の男子とたいして違いはない。しかしどこにでもいる高校2年生……といったら嘘になる。僕は特殊能力を持っているのだから。
――誰かとキスをすると、それが意図的であろうとそうでなくとも関係なしに……口づけを交わした相手を自分にベタ惚れさせてしまう。原理は不明だが、そういう理不尽かつ意味不明な能力が僕には生まれつき備わっていた。
今日初めて会ったばかりの曜ちゃんが僕にこれほど気を許しているのもそのためだ。
これに気が付いたのはまだ自分が幼稚園生だった時。だいぶ昔のことなので記憶は曖昧だが、僕は女友達と遊んでいた際に何かの拍子でキスしてしまったことがあった。すると今まで普通の仲だったその子が、明らかに僕へベタベタするようになったのだ。それが全ての始まりだった。
他にも過去に犠牲者は出た。愚かなことに、僕が効力を面白がって色んな人に試したからである。そしてこの能力――惚れ状態にしても再度キスすれば元に戻る。早い段階でこの事実も知ったので、なおさら遊んでしまった。
7歳の時に親戚のおじさんに試して襲われかけてからは能力の恐ろしさを理解し、以降はずっと封印し続けてきた。悪人や研究者に利用されても困るし。
「曜ちゃん」
「ん?」
「キスしてもいい?」
だが、1時間前方不注意に歩いていた僕はジョギング中の彼女と衝突、不運にも唇が重なり――能力を9年振りに発揮することになった。
くどいようだが、元々僕と彼女は赤の他人。だったらこの状況は非常に良くない。なんとしても効果を解かねばならない。
ただし……。
「そっ、それだけは……ダメ」
「やっぱりかーーいっ!!」
僕は心底絶望して叫んだ。
そう、この能力はメリットばかりではない。欠点もある。元に戻すにはもう一度キスする必要があるが、解除しようとすると相手がどういうわけか拒む。よって戻すのが結構難しい。
「頼むよ」
「ダメ! なんだかわからないけど、それをしたら今の私が私じゃなくなっちゃうような気がするの!」
ほい、この通り。どうしようもなくなってしまう。
「仕方ない、こうなれば」
「え?」
「Good-bye!!」
「あっ、ちょっと!?」
僕は彼女を置いて駆け出した。戦略的撤退である。すまない、今日会ったばかりの見ず知らずの娘よ……。
●○●○●○
「……ふぃ〜っ」
あれからなんとか曜ちゃんをまいた僕は、(たまたまだが)淡島神社に続く階段を半分ほど上ったところにある途中地点の小広場へ逃げ込み、そこで一息ついていた。彼女はスピードと持久力があったが、そこは男女の差で辛勝。
「やべぇぞコリャ。
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