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ことりちゃん、付き合ってください(血涙)
No.1:開始早々フラれております。
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彼女がここに留まる理由はないかもしれない。

 ――だがな、そうはいくか!

「待てよ、海未」

 オレは去ろうとする海未の肩を掴んで引き止めた。だってここで彼女が帰してしまったら、なんかどうしようもなく惨めな気分になりそうだから。

「放してください」

 微かに振り向く海未。そこから見切れる表情は中々に冷たい。まずい、こうなった海未はとても説得が困難だ。

 ――仕方ない。恥ずかしいがアレをやるしかない!

 オレはプライドを彼方へ捨て去って、最後の手段に出た。

「そこをなんとか頼むよ。うみみぃ……お願いっ!」

 そう、ことりちゃんが海未に頼み込む際に用いる伝家の宝刀――ことりちゃん流『お願い!』である。これを潤んだ瞳かつちょっぴり艶かしい雰囲気でやれば海未は屈服するはず!

 さあ、彼女の反応は――

「……二度とやらないでください。あと『うみみ』って何ですか! 私は海未ですよ」
「なん……だと……?」

 嫌悪感丸出しの引きつった顔で一蹴である。ひどい。

「ことりちゃん伝家の宝刀『お願い!』が通じないなんて! ……うみみはなんとなくだ」
「あれはことりがやるから効果があるんです! あなたは馬鹿なんですか!?」

 おまけになんだか変なスイッチを押してしまったらしい、海未が全く別の方向性において怒り出した。

 ――って!

 オレはひとつだけ聞き捨てならない言葉を投げかけられたことに気付く。海未のやつ、とんでもないことを抜かしやがった。

 それは至極シンプルなワードだったが、だからこそ放っちゃおけない。オレは湧き上がってきた感情で、ゆらりとふらついた。

「馬鹿とはなんだ……」
「そのままの意味ですよ!」

 ――プッツーン!

 意識の裏で薄々悟る。これはアウトだ。時すでに遅しだ。イラッときてしまった。

「へぇ……言ってくれるじゃねぇの。厳しいね」
「な、なんですか。急に大人しくなって……」
「そんなんだから……」
「はい?」


「そんなんだから彼氏が出来ないんだぜバッキャロー!」
「なっ!!?」

 嗚呼、口喧嘩の勃発である。

 しかしながらこういうのはよくある。オレと海未は変なところで折り合いが悪く、そのために昔から些細なことで喧嘩しやすい。大抵の原因はオレから発生するが。

「あらら、まーた始まっちゃった……二人とも喧嘩はダメだよ!」

 ことりちゃんが現場にいないのもあってか、突っ走り屋な性格をした穂乃果が珍しくも仲介に入るが、こちらは生憎止まれない。

「あとな、バカにするなっ! 馬鹿なのは元々なんだよぉ!」
「そこを認めてどうするんですか!」
「うぬっ……や。やかましいぜ! だが海未よ、その馬鹿
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