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堕天少女と中二病少年
黒騎士たるもの、いかなる時であろうと余裕にあふれていなければならぬ(黒騎士談)
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した。

 一瞬迷ったが、押し黙っても仕方ないので我は思っていることを口にする。

「言われてみればこのお前の質量は重りとしてぴったりかもしれぬ。ほどよく重いからな」
「デリカシーなさすぎ!」

 と、我慢できなくなったように堕天使が叫び、むくれた。

 ……わからぬ。自分から重りだというようなことを告げておきながら、いざこちらが重りとして称賛したらヘソを曲げてしまうとは。

「おい、我が気に障ることを口走ったか?」
「自覚ないし……」

 訳がわからなかったので訊いてみる。すると興醒めした様子で堕天使は答え、我の体から降りた。
 駄目だ、どうしても我にはわからぬ。女心は難しいぞッッッ!

 面倒な状況になってきたので、我は苦し紛れながらも話題を動かすことにした。

「お、おい。このままでは埒が明かなさそうだから話を変えるぞ。もうすぐテストとかいう障壁があるが、勉強は進んでいるか?」
「へ?」

 ところが、である。
 我が適当に堕天使へと持ちかけた――“テスト“についてのこと。それを耳にするなり、堕天使が固まったのである。

 すぐに堕天使は平静を取り繕い、

「ヨハネが遅れをとることはないわ……」

 顔を引きつらせながらそんなふうに呟いたが――我は彼女の動じっぷりに、一抹の不安を覚えた。





〜〜‡〜〜‡〜〜‡〜〜





 時は流れ、1週間が経過。テスト初日が終焉した。

 学校には、クラスメート(民々)をはじめ死に物狂いになっている奴がわんさかいた。今日で2教化分済んだためか緊迫は多少マシになったが、空気が弛緩したと言うには到底及ばない。まだ3日テストがあるので、無理もない。

「焦っている者ばかりだな……」

 我は彼らとは真逆で余裕にあふれている。テストになんて負ける気がしないのである。民々を見ると思うのだ。前々から準備しておけばこうはならないだろうに、と。

 ――それよりも早く帰らねば。


 我は足早に教室をあとにするのだった。




「いましがた帰還した!」

 道を暫し歩き(拠点)へ戻ってきた我は、ドアを通ってから宣言して即行で自室へ入り、ベッドへ仰向けに倒れ込んだ。

 柔らかな感触に包まれる中で、誰にも聞こえない声で愚痴を吐く。

「まったく解けなかったぞ……これは詰みやもしれぬ」

 遅れて部屋の向こうから「おかえり」と母の声が返ってくるのを耳の片隅に捉えながら、我は自分の顔から血の気が引いているのをひしひしと感じていた。

 ――危ういのは我の方だったのだ。鍛練に集中するあまり勉強の方をかつてないほど放棄してしまっていたッッッ!!

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