堕天使と黒騎士は契約した
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だ、満足か?」
「理由はわかったけど、ちょっと不本意」
納得しつつも複雑な表情をする彼女に、我は続ける。
「実際は中断したっきりだからな。いいだろう、いつか再び剣を交え――おっと、騎士道上もうお前とは戦わぬ」
「うふふ、あなたの騎士道ってどうにも脆そうね」
「そうかもな。しかしお前は堕天使としてボロを出しすぎているではないか……クククッ」
最後は双方とも小言をこぼし、笑い合った。
ああ――心踊る。必要以上に馴れ合ってしまったからかもしれぬが、津島善子とは気が合うように感じる。
「ねえ……えっと……その」
と、急に津島善子が静かになり――たどたどしく言葉を紡ぎはじめた。
「どうした?」
我が訊くと、彼女はいきなりこんなことを口にしたのだった。
「わ、私の――リトルデーモンになりなさい!」
「……ぬ?」
〜〜‡〜〜‡〜〜‡〜〜
「……思い出したならいいの!」
津島善子はぶっきらぼうにそう言ってぷいっと顔を背けると、そっと安心したように胸を撫で下ろした。毒気を抜かれた我はベッドから降り、登校の意を固めた。
「では、学校に赴くとするか」
うむ、そうだった。昨日をもって我は彼女の『リトルデーモン』になったのだ。別に比喩ではない。リトルデーモンは、リトルデーモンだ。あの後は彼女の家で儀式やら呪文やらをやらされて大変だった。
決闘する前に津島善子が言おうとした、彼女の欲する勝利代償。それがまさにこれ、『リトルデーモンになってもらうこと』。彼女いわくクラスの民々にも頼んでみたらしいが、男女ともに話がうまく通じなかったそうだ。
気持ちはわからんでもない。我も3ヶ月前黒騎士になったと初めて学校で宣言した時は、クラスの全員があからさまに困ったような顔をしたものだ。あれがどれほどこたえたことか。
……結局のところ津島善子の望みを端的に言うなら『友達になって』と、こういうことだろう。
「さっさとしないと置いていくんだからね!」
「うむ、ならば我を置いてさっさと行くがよい」
「ちょっとは焦りなさいよ!」
困った堕天使である。まあなんだ、我は制約に従ったに過ぎぬ。異論する気は毛頭ない。
「だったら落ち着くことだな、堕天使よ」
我はすました顔で堕天使をなだめつつ、通学バックを手に取るのだった。
――我は黒騎士。またの名を手尾湧丞。昨日をもって津島善子こと堕天使ヨハネの『リトルデーモン』になった、類い稀なる騎士だ。
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