堕天使と黒騎士は邂逅する
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……それは仮の姿の名前よ!」
「そうか。では時に津島善子、どうしてお前は自身の名を嫌う」
「それは――って、なんであなたに教えなきゃいけないのよ! 馴れ馴れしいわ!」
「フン、こっちの台詞だ。さっきからジロジロと睨み付けて……なんなんだお前は」
「バレて……いたの!?」
「お見通しだ」
本気で驚いた表情をする津島善子。ああ、呆れたぞ。確かに彼女は我の目の前でしゃがむことで目線より下を隠し俺に眼光を飛ばしていたが、まさかあれが隠密観察のつもりだったとは。
「まっ、まあいいわ。それよりあなたに訊きたいことがあって!」
「……ほう」
「一体――何者なの? あなたからは下界の人間とは別のオーラを感じるの……」
彼女の目付きと声のトーンが変わった。鋭さ、妖しさを孕んだ――これは堕天使と名乗っていた際と同様の眼! なるほど、なかなかに良きまなざしよ。一時は見込み違いかとも考えたが……やはりこいつ、できるッッ!!
「ああ、そうだろうな」
「もしかして……あなたも堕天使っ!?」
冷静に答えた我をビッと指差し、興奮気味な声で津島善子はそう言った。
「津島善子……もとい堕天使よ。お前の推測はおおむね正しいが、一点だけ相違している」
「相違……?」
――が、残念だったな津島善子。外れだ。
堕天使が息を呑む。いつの間にやら民々も我が続けて答えようとするのを真摯に見守っている。
そうだ――驚け、戦慄け、緊迫しろ。
我は響き渡るよう声高に告げる。
「我は堕天使ではなく――――黒騎士!!
また……人間での名を、手尾湧丞ておようすけ!」
どっ、と周囲に笑いの渦が展開した。一斉にどいつもこいつも吹き出した。
……おそらく彼らはあまりのインパクトを受けて精神に異常をきたしたのであろう。悪いことをしてしまったものだ。
気圧されでもしたのだろうか、堕天使は目を大きく見開いていた。
人間的時系列で表すと、今日は中学2年生になった始業式の日。
かくして――我と堕天使は、邂逅した。
そういえば、皆が笑い転げているどさくさに紛れて民の誰かが「あいつも中二病患者だよな!」とか呟いていたのを我は聞いた。
我が病に侵されていると? それがどんなものかは知らないが一応、心しておこうか。ククッ……もっとも我は無敵の存在なので病など関係ないがな。
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