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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第一話 亡命者
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。大佐もご存知かと思いますが、帝国では補給担当士官の地位は極端に低い。兵站を四年間専攻と言えば間違いなく落ちこぼれです」
彼女の言う通りだ。まず間違いなくヴァレンシュタイン中尉は落ちこぼれだろう。大した情報など持っていないし、そんな落ちこぼれをスパイにするとは思えない。おそらくは偽の身分だろう。
「ところが中尉の士官学校の卒業成績は五番でした。しかも帝国高等文官試験に合格しています。年齢は今現在で十七歳。十二歳で士官学校に入学し十六歳で卒業しています。どう見ても落ちこぼれには見えません」
「……」
同感だ、どう見てもおかしい。困惑する俺に今度はバグダッシュ大尉が話しかけてきた。
「そういうことなのですよ、大佐。スパイならできるだけこちらを信用させようとする。であればこんなちぐはぐな偽の身分は作らないでしょう」
「亡命の理由は」
「殺されかかったそうです。相手は貴族の命令を受けた男だったらしい。その男を返り討ちにしましたが、これ以上帝国にいるのは危険だと判断したそうです」
平民の中尉が貴族に殺されかかる? 一体何をやった?
「彼の両親が或る貴族の相続問題でその親族に殺されたそうです。今回の一件もそれに絡んでいるのではないかと彼は言っています」
「本当なのか、それは」
俺の問いかけにバグダッシュ大尉とミハマ少尉は顔を見合わせた。そして今度は少尉が後を続ける。
「フェザーン経由で事件を問い合わせました。確かに五年前、コンラート・ヴァレンシュタイン、ヘレーネ・ヴァレンシュタインの両名が殺されています。彼らは弁護士と司法書士で或る貴族の相続問題に関わり殺されたとされています」
「……」
「当時帝国ではかなり有名な事件だったようです。二人の間にエーリッヒという息子が居た事も確認できています。年齢は当時十二歳、生きていれば十七歳です。亡命してきたヴァレンシュタイン中尉と一致します」
「……本当なのか」
「彼の所持品の中にフェザーンの銀行カードがありました」
「銀行カード?」
「ええ、二百万帝国マルクの預金が入っています」
「冗談だろう……」
声が震えた。平民の中尉が二百万帝国マルク? 一体何の金だ?
俺の困惑を他所にミハマ少尉が平静な口調で話を続ける。しかし少尉の顔には先程まで有った笑みは無い。
「両親が死んだ後、相続問題で世話になり、その事で彼の両親を死なせてしまった事を悔やんだ貴族が彼に与えたそうです」
「信じられるのか? 兵站統括部は補給担当だ。横流し、横領などその気になれば私腹はいくらでも肥やせるだろう」
だとすると犯罪を咎められそうになり亡命したということではないのか? そんな男をうちに入れたら今度はこっちで私腹を肥やすだろう、冗談じゃない!
「確かにそうですが、金額が
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