ファンディスク:神話と勇者と断章と
ピース・オブ・レイ
ディザイアネス・グレゴリオ
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」とは本人の談である。
「結構足しげく通っているらしいぞ、ライブ」
「ライブまであるんですか」
「ゲリラライブというか……突発的に主街区の転移門広場前に現れては、三曲だけ歌って帰っていくらしい」
「ほー」
「しかも出現する場所はほぼランダムらしくてな。全部聴こうと思うとかなり苦労する、と言う話だ」
またそんなドルオタみたいな作業をシャノンが好んで行うとは、いくらゲームBGMに歌詞を付けた曲だからとはいえ、面倒くさがりの彼にとってはかなり珍しいなぁ、以外にもファン精神みたいなのがアイツにもあるんだなぁ、とセモンがしみじみと思っていると、まぁ、とゲイザーが切り出した。そして非常に納得のいく答えが、セモンには与えられたのである。
「最初から最後まできちんと聞くと、曲別のバフがもらえるらしくてな」
「ああ、間違いなくそっちが目当てですね」
なんだ、感動して損した。
セモンは自分の表情が苦笑いの形になるのを、抑えることができなかった。
***
それから暫くの間は、シャノンが剣を振るときに歌っているのをよく見ることが多かった。コハクが「アイツ、あんな明るい奴だった?」と訝しがるくらいには、機嫌が良かったと思う。恐らくは自分で《吟唱》スキルを習得しようとして練習していただけだとは思われるが。
ただ――そんな日も、ある日突然、ぱたりと止んだ。シャノンの《巨剣》スキルが異様な速さで熟練度1000を記録したのと、ほぼ同じ頃だった。10月の半ば――アインクラッド第四十層が攻略される、少し前。
あとで聞いた話だが、この頃、『ウタちゃん』はモンスターとの戦闘で亡くなったそうだった。
シャノンは意外にも献花のような事を行いに第一層の黒鉄宮まで降りた。
それから一か月後。シャノンは自力で《吟唱》スキルを習得し、それをレベリングに役立てた。モンスターを自らにターゲッティングする歌で敵をかき集め、殺戮することで大量の経験値を稼ぐ、荒業。これは聖歌さ、とシャノンは嗤う。
そしてしばらく後に、《聖剣騎士団》は、全員一斉に特殊なエクストラスキル――俗称として『ユニークスキル』と呼ばれる力を手に入れた。
さらに暫くして。
シャノンは、攻略組の一団を、圧倒的なレベル差に物を言わせて血祭りに上げるという騒ぎを起こした。
現場に駆け付けたセモンは、彼が本来ならばゲーム内では発生しないはずの『血の海』の中で、笑いながら『死体』を切り付け続ける姿を見た。
生き残った幸運なプレイヤーは、こう言った。
「悪魔が、聖歌を歌いにやってきた」
と。
それから紆余曲折あって、ギルドは解散し、再
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