ファンディスク:神話と勇者と断章と
ピース・オブ・レイ
ディザイアネス・グレゴリオ
[1/4]
[8]前話 前書き [1]次 最後
親友が珍しく歌詞つきの歌を歌っているのを、セモンは剣の手入れをしながらきいた。少し、驚く。癖毛を揺らしながら特に意味もなく巨剣を振り回す彼――シャノンは、あまり歌詞つきの歌を好まないからだ。歌うとしても聖歌とか死葬曲とか、そういった宗教音楽ばかりを何故かセレクトしてくる、奇妙な趣向をしていることを、セモンは知っている。
しかしシャノンは機嫌が良さそうに、歌いながら剣を振る。つい一か月ほど前に習得した、《両手剣》派生エクストラスキル、《大剣》スキルのそのまた派生エクストラスキル、《巨剣》――扱いが難しく、現在の全プレイヤーの中で見ればあり得ないほど高いシャノンのレベルが無ければ、筋力値の最大値が不足し、スキルを上手く扱えないだろう、とさえ言われる、その廃人向けスキルは、マイナー厨の彼のお気に召した様で、最近は低いスキルレベルをいつでも上げている。
シャノンは半ばチーターだ。システムの抜け道というか、そう言うのを発見するのが異常に上手い。
レベル上げにはモンスターに与えたダメージとヒット数…大抵はどちらかが増えればどちらかが減る…から計算される経験値が必要となるところを、どちらもを稼ぐ奇妙な攻撃方法を発見したり。
ラグというか、SAOを統御する『カーディナル・システム』のわずかな処理限界を利用したスキルレベリングの方法を見つけ出したりとか。
もちろん、しばらくすれば、カーディナルがその『抜け道』を潰してしまう。けれどもシャノンは、すぐに新しい抜け道をまた発掘する。一体どこからそんなアイディアが出てくるのか、というかカーディナルってそんなに抜け穴多かったか、と、もう一人の親友――ハザードも頭を抱えていた。
そんなシャノンの事だから、彼のスキルスロットは殆どがエクストラスキルで埋まっている。本来ならば特殊な手順を踏んだり…例えば《体術》スキルがそのいい例だ…例えば対象スキルを一定以上使い続けるとランダム、あるいは非常に特殊な条件を満たした場合のみ発生したり…《刀》や《大剣》がそれである…するそれらを大量に持っているという時点で少々おかしいのだが、そこはまぁアイツだし、で済ませられてしまうのもまたおかしい。
だから今回も、何か新しいエクストラスキルでも習得して、そのスキル上げ条件が歌うことなのか――などと思ったのだが。
「ほう、その歌、『ウタちゃん』のものだな」
意外に上手いなお前、と、歌うシャノンに気が付いた、銀髪の青年――ゲイザーが、セモンの隣に腰を下ろしながら言う。
ゲイザーは2023年の五月、シャノンが連れてきた、情報屋を営む体術使いの男性プレイヤーだ。何でもシャノンとは以前からの知己だそうで、彼の提示したチートレベリングの方法を独自に改良し、彼もまた非常に高
[8]前話 前書き [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ