第83話 推参
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黒ずくめの男は、門の前に立つと編み傘を上げ、天守閣を見上げた。まるで、門を開けろと言わんばかりに。
「なんだ、あいつ。一人きりで立ち向かうつもりでごわずか?」
天守閣より双眼鏡をのぞいていた大山が叫んだ。
あまりにも驚愕している大山に天草は大山の双眼鏡を奪い、その男をみた。
「あ、あいつはぁーー!」
天草も叫んだ。何故なら、その者はこの時代に存在しないからだ。
「じゅーーーべぇーーーーーー!!」
天草は怒りに満ちた声を張り上げ絶叫した。
そう、その異様な黒ずくめの男は、江戸時代に魔界衆と戦い勝利した柳生十兵衛その人だった。
「な、なんと。十兵衛だと?」
魔界衆は色めきだった。
「まさか、こんな時代で十兵衛と再び相まみえられるとは、思わなんだわ」
武蔵は喜びに震えて言った。
「柳生十兵衛殿と言えば、但馬様の御子息で柳生新陰流の使い手。相手にとって不足なしですなぁ」
近藤も喜びを隠せないように笑った。
「そういえば、武蔵様達は十兵衛殿に一度負けておられるのですよね?」
沖田が武蔵たちを挑発するように言った。
「ほぉ、小童。ここで叩ききってやってもいいのだぞ?」
荒木がゆらりと立ち上がり沖田にたいじしようとした。
「待たれよ、各々方。ここで共に仲間であるのに争うことはありますまい。たとえ、十兵衛とて、何百の死人を相手にすることは至難の業。ここにたどり着く前に力尽きることも可能でしょ」
天草は慌てて仲裁に入った。ここで、同士討ちなの洒落にもならない。
「四朗よ。その慢心が前の戦いに敗れたのであろう?」
但馬守が天草に冷たく言い放った。
「た、但馬殿!!」
天草は但馬守を睨みつけた。
「では、お聞きもうすが、但馬殿に何か策はあるのございますか?」
天草はふふんと鼻を鳴らし但馬守を挑発した。
「おそらく、きゃつにとっては死人共など木偶人形と同じであろう。そこでだ、我らは二人一組できゃつに対峙する」
但馬守はゆっくりと威厳に満ちた声で魔界衆を見渡しながら言った。
「はぁ?二人一組だと?但馬、臆したか!!江戸柳生も落ちたものよ」
武蔵は、但馬守を笑い飛ばした。
「フフフ、老いたのは武蔵殿ではないか?前の戦いでわしもあ奴と差しで勝負した。その結果はどうか?」
但馬守は武蔵を睨んだ。
「その結果は、我らの敗北に終わった。が、それはいい。それはそれだ。致し方ない」
但馬守は一息ため息をついて、再び話を続けた。
「では、ここにいる全員でかかれば勝てるだろう。が、それでは、全く面白味がない。だからこその二人一組なのだ」
但馬守は武蔵を見つめた。
「なるほど、そういう訳か。が、二人一組で勝てるとは限らん。足を引っ張られて負けるやもしれんぞ?」
武蔵は、魔界衆全員を見渡した
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