董卓の誤謬 〜小さいおじさんシリーズ17
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震えるしかないこの光景を。
「―――考えてもごらんなさい。二十年に渡り騎馬民族の襲撃に耐えてきた歴戦の猛者が、ただのデブのわけがないでしょう。彼は騎馬から両手で弓を射ることすら出来る騎馬の達人ですよ」
騎馬から!?両手で!?どうやって!?
「某無双ゲームでは爆弾魔みたいな感じにされてますけどね…何で制作陣はその辺の設定は完無視するのやら…ふふふ」
「ほう…随分と、悪者にされているのは知ってたがねぇ…で、お前は孫堅の配下かよ」
ずしぃ…とのしかかる掌が端正を圧し沈める。顔は蒼白を通り越して紙みたいになっている。
「俺、思うんだけどさぁ…俺が不細工って設定、必要かなぁ…。もしかして、もしかしてだよ?美青年と言い伝えられる男が、自分のキャラを際立たせる為に、俺の容姿についての記述をいじる…なんてことはないかねぇ。三国志に美形は2人要らない、と考えそうな誰か。たとえば『美 周 郎』なんて呼ばれている色男なんて、怪しいな〜、と思うんだがねぇ」
董卓は、ぐいぃ…と首を傾けて端正の顔を覗き込む。…や、やめてあげて?端正のHPはもう1よ!?
「歴史は勝者のもの。…そんな当然の摂理、貴方なら分かっているのではないですか」
ジャイアンコンサート五分前みたいな雰囲気を切り裂いて声をあげたのは、意外にも白頭巾だった。
「こっ…こら刺激するな、死ぬぞ!!」
「これだから現場を知らない坊ちゃん管理職は!!相手は弓だぞ、バハムート間に合わねぇよ!!」
薄笑いを引っ込めて、董卓がすっと手を引いて顔を上げた。
「………ほう」
弓術で鍛え上げられた胸板を、威圧するように反らして董卓が白頭巾を睨み付ける。…視界の端で、畳が僅かに動いた。
「貴方に関する記述がここまで酷くなった理由はいくつか思いつきます。反董卓軍の悪事も上乗せされたこともその一つですが…銅銭の改鋳を始めとする内政のまずさ、それに」
―――皇帝を擁したうえで、敗戦したことにあります。と続けて白頭巾は羽扇を顎にあてた。
「皇帝を擁するならば、全てにおいて勝算のある状況を作ったうえで、権威づけとして利用するのがベストなのです。何処かの小狡い丞相のように」
「お前にだけは小狡い云われたくないわ」
「実権の有無に関わらず『皇帝』は本来不可侵のもの。貴方しかり、李?しかり、袁術しかり、苦し紛れに無理矢理『帝』を擁して失敗した者達は、大抵ボロクソに書かれます」
劉備は漢朝の末裔を僭称してた気がするし、袁術は金印持って逃げただけだった気がするけど誰も気づいてないみたいだから俺も何も言わない。
「あなたは支配を急ぎ過ぎた。騎馬民族を完全に取り込み、味方を増やし、経済を地道に発展させた上で権威付けに帝を擁する。この順番でいけば、正直…我が主の入り込む隙すらなかったことでしょう…」
―――なに
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