董卓の誤謬 〜小さいおじさんシリーズ17
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るからだろうか。そういう状況を知ってか知らずか、大家息子は今日もずかずかと上がり込んでくる。
「ほら、ポカリいるでしょ?あと〜、ほら、親父に届いたお中元!!」
どさり、と置かれたヨックモックの大箱に、三人が目を輝かせてにじり寄る。実は俺も地味に嬉しいのだが…。
「……食欲がない」
「大丈夫です!皆さんが食べるでしょ!?」
………くそが。
「最近はどんな武将に遭いましたか!?」
こいつ…病人の枕元でも尚、三国志の情報を貪欲に集めやがるか。
「………なんか…徐庶とかなんとか………」
「徐庶っ、渋いとこくるなぁ…見たかったなぁ…」
「お前さ…三国志の武将なら何でもいいのか」
「えー?そんなでもないですよ!一応好き嫌いありますし」
「嫌いな武将とかいるのか…」
「何人かいますけど…董卓とかダメですねぇ、有名なとこだと」
「へぇ、董卓。まぁ順当だな」
「すごい極悪人だしー、そもそも存命中に三国始まってないしー、デブサイクだしー、いいとこないですよ」
さらに調子づいて董卓がいかに悪い奴か滔々と語り続ける大家の息子。そして、少し離れた所で斜め下をじっと見つめながら、何かに耐えるような顔つきで固まる、三人のおじさん。
―――おい、お前ら。一体、何をやった。
散々喋って満足した大家の息子が帰ったあと、奴らは暫く斜め下を見ながら固まっていた。好物のヨックモックを前にしても、どうも食指が動かないらしい。
「……まぁ、一般的な董卓感……だな」
端正が口火を切った。
「……あれだ、ほら…歴史ってのは勝者のものだからな」
―――読めたぞ。
首尾よく董卓を仕留めたあの連中は、こぞって歴史書に董卓の悪口をあることないこと書きまくったにちがいない。
「戦闘地域での略奪行為も皇帝の擁立も残忍な拷問も、何処かの誰かも当然のようにやってましたからねぇ。『英雄記』をナナメ読みした当時も『え?……え??』て二度見したものですよ。くっくっく…」
「ぐぬぬ」
白頭巾が水を得た魚のごとく、生き生きとしゃべくり始めた。
「ぶっちゃけ話、当時は当然のように洛陽周辺で行われていた略奪や強姦、全て董卓におっかぶせたでしょう」
くっくっく…と厭な笑い声を上げ、白頭巾は堪えきれないというように羽扇に顔を埋めた。
「国が荒れれば軍勢が動く。多くの軍勢が動けば、膨大な物資や兵糧が要る。反董卓軍も、然り。特に寄せ集めに過ぎなかった反董卓軍の兵糧、不足なく調達するに綺麗事では済みますまい…『ミンナの悪事』を全て董卓のせいにしたならば、彼のしていたことは他の武将とさほど変わらなくとも、ものすごい暴虐を尽くしたような語られ方をするでしょうなぁ」
「後世にあれらの文献を読んだ私は、ハナから『どれだけ国が荒れていたか』の指標にし
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