S-5 騎士/因縁
[5/5]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
いるものだった。しかし、ソレを使うなどとは予想すらしていなかった。
彼女の手に握られた不可視の剣にさせる風が凄まじい程の勢いで吹き荒れる。振るった剣の形をするように暴風がディルムッドを捉え、後方に吹き飛ばす。
「グアッ……!?」
うなり声を上げ、木にぶつかるディルムッド。その視線の先には既に黄金の剣を振りかぶったアルトリアが居た。どうやら作り出した暴風に乗って瞬時に移動したようだ。
黄金の剣がディルムッドを肩から斬り裂こうと迫る。
当たる瞬間に聴こえた音は、肉を断つ音でも、血が吹き出す音でもなく、甲高い金属音だった。
「その剣は……!」
アルトリアが驚き、後退する。ディルムッドの左手には小剣が握られており、その攻撃を防いだ。
いつのまにか暴風も止んでおり、その一瞬で小剣を取り出したのだろう……と、アルトリアは考える。しかし実際は違っていた。
確かに小剣を出したのは一瞬だったが暴風が止んだのもその小剣の能力だった。出した瞬間に暴風は強制的に止み、自由となった腕でディルムッドは黄金の一撃を防御した。
「これはお返しだ!」
「!?」
ディルムッドは即座に近づき、右手に握られた長剣を振るう。
今度は「直感」が働くよりも速く、アルトリアに迫る。アルトリアは黄金の剣でガードしようとする。
_今回も俺が上手だったな、騎士王よ!
ディルムッドは微笑み、全力で剣を振るう。
アルトリアの黄金の剣で防がれたら並大抵の宝具なら防がれるのがオチだろう。ジークフリートの長剣でも、ファヴニールの細剣でもそう成りうるだろう。しかしディルムッドの持つ長剣はその限りではない。
防御しようとしたアルトリアの黄金の剣を透過し、魔術によって練られた鎧を斬り裂く。
その一撃は鎧を半壊させ、アルトリアの細い身体から鮮血が噴き出させた。紅の長い槍はその能力により無力化させるが、白の長剣の能力は剣の透過まで、そこからは純粋な力で鎧を砕いた。
令呪による強化がかかっているのもそうだが、白の長剣の持つ純粋な力が凄まじいと言う事がアルトリアは理解した。
アルトリアは即座に後方へ跳躍、その際魔力放出も併用して直ぐに詰められないほどの距離を取る。
「騎士王よ、俺はまだまだ行けるぞ。騎士の闘いを続けようではないか」
ディルムッドは剣を向け、心底楽しそうな笑みを浮かべていた。心から望んでいた闘いが今のところなんの邪魔も無く続けられているのだ。そうなっても仕方がない。
「そうですね……続けましょう……!」
お互いの得物を改めて構え、二人のセイバーはその因縁の闘いを続けようと地を蹴り、跳躍する。
闘いはまだ、始まったばかりだ。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ