S-5 騎士/因縁
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動作を起こさない。
乾いた金属音が響く。金髪のセイバーが不可視だった得物を振り、マスターの首を貫こうとした凶槍を弾き飛ばしたのだった。
一瞬だけ不可視の得物は金色の剣身を顕にしていた。しかしそれも直ぐに風が纏い、再度不可視にする。
「くっ……」
黒髪のセイバーの槍は弾かれた直後に粒子となり消え去る。自身の槍が弾かれた事を予想していたかのように冷静な表情だが、つい悔しさの混じった声が漏れる。
金髪のセイバーは通常ならばこんな事はしないだろう。しかし、そうしなければならない理由がある。そのため非道な事をするマスターを守ったのだ。
────ゲーダーがローグに命じた作戦は作戦と呼ぶには拙いものだった。父と子と言う立場を利用し、ゲーダーはローグに他のサーヴァントと戦い消耗させろと命じた。しかし結果は振るわず、ジークフリートを少しは圧倒したものの乱入したファヴニールに返り討ちにされてしまった。
それに失望し、ゲーダーは最後のセイバーの姿や相性を確認しないまま、ローグにこう命じた。
「令呪を使ってその使えない英霊を自害させろ」
幼い頃から半ば洗脳されてきたローグは直前までその命令に従おうとしてきた。だが、その際にローグが思ったのは自身を主だと慕ってくれ、信頼を置いてくれたセイバーの事だった。
「彼の願いを叶えてやりたい」
セイバーが漏らした本音を、願いを持たない彼は──正確に言えば願いは持っているが、それは聖杯で叶えるようなものではない──自分の人生の中で最も短い期間で最も信頼した友の願いを叶えたい。それがローグの唯一の願いだった。
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ローグ・バラッドは魔術師の技量としては超一流と言っても過言ではない物を持っていた。しかし、それを許さなかったのが父親であるゲーダーであった。
それまでは常に上位の実力を示していたプライドを息子に砕かれ、向上させようともせず、息子の才能を潰そうと考えた。
ゲーダーが行ったのは自分の最も得意である制御魔術をローグに少しずつ、まるで癌のようにかけ続けた。尤も、元々ローグら自らの実力を尊敬する父親であるゲーダーより下に見ていて常に目標として来たのだがそれこそがゲーダーは気にくわなかった。
長年かけ続けた制御魔術は入力するだけでローグの肉体を、精神を傷つけるまでの凶悪なモノへとなり、ゲーダーは初めて反抗した息子へ躊躇なくソレを入力した。
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「……れ、い……じゅを……ガッ……以で……め、いず……る……」
激痛の中、ローグは最後の1画を使おうと必死に声を絞り出す。ゲーダーは魔術を緩め、ローグが声
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