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自然地理ドラゴン
一章 小さき魔物 - 海竜と共生する都市イストポート -
第12話 飛竜 対 海竜 (2)
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か」
「わかる」
「自分は、そこの首長の娘の、そのまた子供です」

「なぜ、ドラゴン、人間、味方する」
「父が人間で、自分は半分人間なんです」
「……」

「母からも、人間の敵にはなるなと言われています」
「……」

 シーサーペントはドラゴンの姿を、変わらぬ表情で見つめたままだった。
 その胸中はシドウにはよくわからない。
 ただ、「ドラゴンを見て退いてくれれば」という最後の望みが絶たれたことだけは、確かだった。

「戦う」

 シーサーペントのその一言とともに、あたりの空気が張り詰める。

 シドウは一瞬で自らの周囲を見回し、集まっていた人間の避難が終わっていることを確認した。

 シーサーペントの咆哮。
 四本の水の槍が、動き出す。

 シドウはその槍をギリギリまで引きつけた。そして直前で高くジャンプすることで直撃を避けた。
 そのまま羽ばたき、一度上空に上がる。



 ……。

 これが、最善であるなんて思っていない。
 むしろ疑問しかない。
 モヤモヤしたものが消えない。

 だが、それでも、この都市が破壊されることは食い止めなければならない――。



 シドウは大きく羽ばたき、体を空高く持ち上げた。
 そしてそこから翼を固定し……全速で急降下した。

 飛竜型ドラゴンの体が、鋭く空を切りつつ猛加速する。
 途中、翼をわずかに畳み、右の鉤爪を構えた。目標はシーサーペントの喉笛。
 そのシーサーペントは、感情のよくわからない目を向けたまま、ただそれを見ていた。

「……!」

 鉤爪が深々と、突き刺さった。
 奥の骨まで届いたであろう感触。

 シドウは足をシーサーペントに当て、素早く鉤爪を抜いた。
 そしてふたたび少しだけ上空へ舞い上がると、炎を出し、シーサーペントの上半身を焼いた。

「……」

 確実な致命傷を与えた。
 顔を逸らしたくなる気持ちを必死で抑え、シドウは最期を見守った。

 焼かれてもなお首の傷口から噴き出す血。翼の風圧で水面へと散っていく。
 そしてゆっくりと、その巨体が後方に向かって倒れていく。

 悲鳴を上げることもなく、のた打ち回ることもなかった。
 集まっていた人間たちが息をのんで見つめる中、シーサーペントは静かに沈んでいった。
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