ターン67 覇王達の戦い(前)
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こう」
あ、これ最初はただのいい人かと思ったけど、さすがに悪魔の大将やってただけのことはある。今までの発言だってどこまで本気かわからない、とことん食えないタイプだ。こんな相手を信用すると痛い目に合いそうではあるけれど、ここで僕を騙す理由はグラファにはない。もし覇王の内通者ならば、わざわざこんなところまで誘い込まずとも覇王城前でかかってくれば兵士たちが勝手に気付いて加勢しに来ていただろうし。
「もういいよ。それで?何してくれるの?」
うっすらとはいえ本性が見えた以上、敬語を使ってやる義理もない。ため口に切り替える僕には何も言わず、部屋の片隅を指さした。すると何の変哲もないただの床がうっすらと光を放ち、魔方陣らしきものが浮かび上がる。
「そこに立つといい。この廃屋は万一のために私が作っておいた覇王城からの脱出経路のひとつでな。転移用のトラップ、ディメンション・ゲートが仕込んである。本来はあちらからこちらへ来るためのルートだが、最上階にある王室の真正面に出ることができる」
「……本当?」
「とっくに察しているだろうが、嘘をつく理由は私にはない。もっとも君にとってはこんな都合のいい話、疑念を抱くのもわからなくもないがな。なので、私ももう少し本音を言おう。正直なところ君がうまくやってくれれば、私は自分の手を汚さずに邪魔者が消えてくれるのをただ見ているだけで済むので大変楽なのだよ。仮に君が失敗したとしても、私への被害はこのルートが使えなくなる程度だからな」
大変腹黒いけど、これぐらいはっきり言われるとむしろ好感が持てる。こういうのを清濁併せ持つ、とか言うんだろうか。なるほど、これは間違いなく大物だ。暗黒界を統治してきたという肩書にも納得できる。
ともあれ、ここまで来たらグラファの話に乗るしかなさそうだ。思い切って魔方陣の中に飛び込むと、視界がぐにゃりと歪み始めた。時間が経つにつれますますひどくなる歪みの中で、最後にグラファの声が聞こえた。
「私はこれでも、ケルトのことは武人として信用していた。そのケルトが君を信じたのならば、それに足る何かを君は持っているのだろう」
何か言い返そうかと思ったけど、結局声にならなかった。口を開くか開かないかのうちに、周りの風景が一変したからだ。ごつごつした石造りの巨大な建物、間違いない。ここが覇王城だ。
だけどそれよりも、目の前の人物に話をつけねばなるまい。まさに今王室に入ろうとしていたのであろう、見覚えのある褐色の男。目を丸くしてこちらを見つめる友人に、とりあえずフレンドリーに手を振って笑いかけてみた。
「……えっと。やっほー、オブライエン」
「な、何?清明、なのか?だがなぜここにいる、そんなはずがない、え?」
冷静沈着なイメージが強かったが、さすがに刺激が強す
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