ターン67 覇王達の戦い(前)
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で呼ばれた身だからな。それに君は今、この近辺ではそれなりに顔が知られているのだよ。なにせ理由はどうあれ覇王に真っ向から刃向って生き延びた、ただ1人の戦士だからな。そのフードで顔を隠していたのと目撃情報にあった全身の痣がないから今までは気づかれなかったんだろうが、その目を見ればわかる。この世界では誰も見たことのない未知のテーマ、壊獣を使い鬼神ケルトを下した人間というのは、間違いなく君のことだろう」
ケルト。こんなところで聞くとは思わなかったその名前に、少し言葉を詰まらせる。その無言を肯定と受け取り、グラファがこちらの目を真っ直ぐ見据える。
「勘違いしないでくれ。ケルトはいい部下だったが、君を相手にその仇討ちなどする気はない。むしろ鬼神の名に相応しい、誇り高い最期を遂げさせてくれたことに礼を言いたい。辛い仕事だったろうが、彼の魂がせめて安らかにあることを祈ってやってくれ」
「その……」
「時間がない、今は覇王だ。君も見ての通り、覇王城は難攻不落の要塞だ。ましてや今は徴兵により集められた悪魔により普段より監視の目が増している。だが奴らを束ねているものの根底にあるものは、あくまで覇王への恐怖でしかない。覇王さえトップから消えれば烏合の衆となり、情けない話ではあるが少し突いただけでその残党も崩壊するだろう。そこで覇王城に乗り込むため、君に私が力を貸そう」
「わかりました。でも、どうしてなんです?どうしてグラファ、あなたは……」
「なぜ私がまともでいるのか、かね?それともなぜ私が直接出向かないのか、かい?どちらにせよ答えは単純だ。残念ながら、今の私はここにこうしていることだけでも精一杯なのだよ」
そう言い、腕に巻いた包帯を外して中身を見せる。老人に擬態したその腕には、人間ではありえないほどの力で無理やり引き裂かれたような傷跡がいくつも生々しく残っていた。傷口からにじむ濃厚な血の匂いが室内に満ちるのにも構わず天井越しに空の一点、あの隕石が浮かぶ場所のあたりを指し示す。
「もう何度も、あの光で自我を失いそうになってきた。辛うじて正気を失う寸前に私の力のほとんどを使い逃げ出すことには成功したものの、それも完全ではない。意識が呑まれそうになるたびに私は、こうして自らの体を引き裂いてきた。痛みだけが、私の意識を明瞭にさせてくれた。かつての魔力も、そして再生能力すらも失い、そうまでしてわずかな闇に逃れ正気を保っても、あの光のせいでまともに外を出歩くことは不可能なまま。日に日に落ちていく体力を実感しながら幾度となく心折れそうになってきた私にとって、覇王と戦おうという君の存在は最後の希望といってもいい」
「そりゃまた、随分都合のいい時に僕が来たわけね」
「少しは手を貸してくれる気になったかね?甘言は悪魔の得意分野だから、まだ欲しければいくらでも囁
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