精神の奥底
66 崩れた仮面
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背中から内蔵に響く強烈なダメージがあることが分かった。
「これが……因果応報だ」
戦意を完全に喪失した少年の上に馬乗りになった姿勢で彩斗はそう言い放つ。
目から光が完全に消え失せ、恐怖と苦痛に顔を歪ませる少年の表情はその場の誰もが直視することができなかった。
再びその場が膠着した。
片や戦闘不能で半殺し状態の少年、そして片やナイフを片手に馬乗りになっている少年。
次に起こることは誰もが予想できた。
「おい…もう……止めてくれ……」
「もう後戻りできない……お前たちが変えてしまった……」
「オレたちが悪かったから……」
「お前たちを殺したってもう戻らない……何度繰り返してもお前たちのような奴らは消えない……」
「まさかお前が……助けてくれ!なっ?頼む!!死にたくない!死にたくない!!」
「でも止めらない……僕も後戻りできないんだ……」
「許してくれ!!」
しかしまるで足に根が生えてしまったのではないかという錯覚を覚え、止めに入ることができない。
背筋が凍りつき、全身が震えた。
少年自身もその恐ろしさに今までの態度を豹変させる。
無様にもプライドも意地も何もかも捨て去り、命乞いをした。
彩斗のナイフが今にも振り下ろされようとしている。
アイリスもメリーも次の瞬間に起こるであろう惨劇に目をそらす。
だがそんな状況の中、七海がその恐怖に押し潰されながらも声を絞り出した。
「ダメ…ダメ!!もう止めて!沢城くん!!!」
その声は彩斗の耳に突き刺さった。
脳の奥、更には神経にも響き渡り、彩斗の動きが止まる。
「そんなの……ミヤの好きだった君じゃない!!」
ナイフを握る手に震え、非情に徹していたその仮面が崩れ始める。
本来の穏やかな性格を押し殺して必死に冷徹な人間を演じていた。
徐々に演じていたものから蝕まれていくのが分かった。
それに恐怖に覚えたこともあった。
そうしなければ、立ち向かえなかった。
自分は血が通っていない残酷な人間だと正当化することで、これまで悪人であっても傷つけることを恐れることなく戦いを続けてきたのだ。
だがもう彩斗には自分で生み出したものでありながら、そんな残酷な自分を受け入れることができなくなってしまっていた。
心の中で白い光と黒い光が激しくぶつかり合う。
しかし既に身体はもうそんな心からのダメージに限界を迎えていた。
「うっ…うぅぅ……」
「……もう止めて…助けて……」
「うわぁぁぁぁ!!!ウァァァァ!!!」
絶叫とともにナイフが振り下ろされる。
再び場が膠着した。
彩斗の絶叫の後、悲鳴の1つも聞こえてこないし、少年も目をパチクリとさせて生きている。
誰もが直前で彩斗が思い留まり、ナイフは刺さっていないも
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