精神の奥底
66 崩れた仮面
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りで冷静さを欠き、自ら隙を生み出すのを狙っていた。
幾ら幼少期から空手を齧っていようと、道を踏み外したような奴がここ数年で真剣に取り組んでいたはずがない。
隙さえできてしまえば、こちらのものだ。
彩斗は自分の中で火口で煮え滾るマグマのような殺意をギリギリのところで自制する。
だが次の一言が彩斗の中の火山を噴火させた。
「お前も高垣みてぇに無様に殺してやるよ!!」
「!?……」
彼はミヤの一件にも関わっていた。
その瞬間に彩斗はミヤとともに襲われた時の記憶を鮮明に思い出す。
いきなりのことで不明瞭になっていた部分もあったが、最後のピースが埋められたようだった。
その場に彼もいた。
ミヤを徹底的に痛めつけていた光景が鮮明に浮かんでくる。
無抵抗のミヤに馬乗りになって何度も何度も殴りつけ、笑い声を上げているあの冷酷で残忍な顔。
廃工場で感じた全身にあの冷たい血が流れるあの感覚が再び沸き起こってくる。
「……もう一度言ってみろ」
「ハッ?」
「もう一度、言ってみろ!!!」
「なっ!?」
徐々に何かが戻ってくるを感じた。
全体重が掛けられていたナイフが軽くなっていき、視界も見慣れた“色”へと戻っていく。
周囲の人間には感覚ではなく、目でその異常な変化に気づいた。
特にナイフを突き立てる少年にははっきりと分かった。
徐々に目が澄んだブラウンから全てを見透すようなグリーン、そしてブルーへ。
そして自分の手首を抑える手から青白いオーラのようなものが発せられている。
徐々にオーラが強くなっていくにつれ、自分の手首を抑える力が強くなっていくのが分かった。
これまで空手で手を合わせた相手もここまでの“気”を発している者とは出会ったことが無い。
今まで感じたことの無い程の殺意に背筋に悪寒が走った。
「うあぁぁ!!!」
その声とともに膠着状態は打破された。
全体重を掛けていたナイフを押し返し、バランスが崩す。
しかし次の瞬間には膠着状態であったことなどを忘れ去る程の反撃の嵐がやってきた。
「やぁっ!!はっ!!うらぁぁ!!」
「がっ!ぐぅ!うぅ!!」
顔面、みぞおちと次々に急所を的確に捉えて攻撃を加えていく。
少年に反撃の隙など無く、彩斗の暴力に押されていく。
僅か数秒後にはまるで少年の方が可哀想に見える状況へと変貌を遂げていた。
容赦のない攻撃で既に鼻の骨は折れ、戦意はほぼ喪失寸前まで追い込まれている。
だが最後の力と戦意を振り絞り、当たるかどうかすらも分からぬ状況でナイフを振り回わそうとした。
「うぅ…クッ!」
「あぁ!!ヤァ!!!」
しかし願い叶わず、ナイフは彩斗に呆気なく止められて奪われた。
そしてそのまま捨て身で押し倒される。
その時の音だけでも後頭部と
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