精神の奥底
66 崩れた仮面
[2/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
」
目では確認できないが、恐らく両手を何かで縛られて自由が効かないのだろう。
彩斗はその怯えた表情を見た瞬間、一瞬頭の中が真っ白になってしまった。
つい数分前までの幸せを一瞬で奪われた2人の絶望が彩斗の中に流れ込んできたのだ。
そしてそれは彩斗を彼らと同様の色に染めた。
「お前たち……!」
自分たちよりも弱い者を集団で食い物にするあまりの卑劣さに全身を焼かれるような怒りが彩斗を包んだ。
ミヤの時と同じ、あの怒りだ。
冷静な判断能力を奪うことなく、どう相手を潰すか、狡猾な思考だけを活性化させる特徴的な怒り。
憎しみで頭がいっぱいでパンクしそうなのに、それを通り越して、逆に頭が冴え始めるのだ。
そして七海もその手前まで辿り着く。
「あなた達……どれだけ卑劣なの!?」
「卑劣?お前らみたいな弱い奴がオレたちみたいな強い奴の言うこと聞くのは当然だろうが!」
七海はその怒りに身を任せ、彼らと口論を始めた。
しかし彩斗はその間にも七海を遠く引き離し、彼らの言葉を聞く度に、辿り着いてはいけない場所を疾走していく。
そして彩斗はメリーの方を見た。
「……」
「!?……」
彩斗の視線を感じ取ったメリーは首を横に振った。
メリーならば、体格の差こそあれど、あの程度の不良を倒すのはそう難しくない。
彩斗同様、メリーもある程度の訓練を受けている。
だが相手が銃とナイフを持っているという悪条件下ではそれが可能かといえば困難だ。
それにアイリスの存在もある。
アイリスは間違いなく戦闘用ネットナビではなく、戦闘用のプログラムもほぼ備えてはいない。
メリー1人ならば自力で窮地を脱することは、十分に可能だろう。
しかし下手に反撃してアイリスを人質に取られるようなことがあればアウトだ。
しかも2人ともネットナビではあるが、現実空間と電脳空間とを自由に行き来できるメリーならともかく、アイリスの身体はコピーロイドだ。
この距離では彩斗のトランサーに逃がすことはできない。
コピーロイドで実体化したネットナビにとってコピーロイドを破壊されることは死に直結する。
「あいつらが死んで安心してたか?」
「なに?」
七海との言い争いから、不意に彩斗の方に矛先が切り替わった。
不良ならではの聞き飽きた脅し文句が飛び出してくるのだろうと、彩斗は経験から予想していた。
隙を伺いながら、聞き流そうとする。
しかし彼らの口から発せられた言葉は聞き流すことは叶わず、彩斗の耳に入ってしまった。
「あいつらが死んでようやくオレたちの時代が来たんだよ。これからはオレたちが“遊んで”やるからよ。これから毎日、無事で帰れると思うなよ」
「!?」
彼らはその一言は彩斗から全ての希望を奪った。
気づいていたが、気づい
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ