第四十四話 あえて罠にその十五
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「そこからなんだよ」
「私のことも」
「調べられるんだよ、戸籍謄本までな」
当人でも滅多に閲覧出来ないものまでというのだ。
「それであんたのことも全部調べたさ」
「この人は新聞記者だからな」
また衝夫が優花に言う。
「御前のことも書けるぜ」
「書かれたくなかったら」
「俺達の言うことを聞け」
優花に詰め寄って告げた。
「いいな、何でもだ」
「あの、ですが」
「嫌だって言ったらだ」
横暴な権力者そのものの顔でだ、衝夫は優花に迫りつつ告げていく。
「わかるな」
「私のことが新聞に載るんですか」
「そうなるからな、そうされたくなかったら言うことを聞け」
「何、難しい話じゃないさ」
鍛冶元の下卑た顔はそのままだった。
「それだけでいいからな」
「言うこと聞くだけでな」
「そうですか」
「ああ、それで返事はどうなんだ」
衝夫は優花を見下ろして笑って尋ねた。
「聞くんだろ」
「嫌です」
優花は衝夫の顔を見上げて告げた。
「絶対に」
「何っ?」
「そんなこと聞けません」
見れば表情も毅然としていた、そのうえでの言葉だ。
「私は」
「そう言うんだな」
「そうです、私はそうしたことは聞かないです」
「おい、聞かないとな」
「どうなるか、ですか」
「わかってるんだろうな」
「わかっています、ですが」
それでもというのだった。
「貴方達の言うことは聞けないです」
「絶対にか」
「はい」
まただった、優花は毅然として答えた。
「聞かないです」
「じゃあこのことばらしていいんだな」
「それでも私は聞かないです」
「そうか、わかった」
「よし、早速記事書くな」
鍛冶元も口を歪めさせて言った。
「これから」
「俺も学校で言います」
「そうするか」
「言うこと聞かないんですからね」
「それでも私は聞かないです」
あくまでこう言った優花だった、衝夫達はその彼女にさらに言おうとするがそれでもだった。その場にだった。
衝夫達は優花に視線を集中させていたので気付かなかった、龍馬達が来たことに。その彼等がだ。衝夫達の前に出て来た。
第四十四話 完
2016・11・1
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