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ソードアート・オンライン〜黒の剣士と紅き死神〜
外伝
外伝《絶剣の弟子》H
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まったのか、ということを。
 紺野藍子という女の子を異性と意識し出したのは、多分小学4年生の終わり頃だった。きっかけは特に無いが、多分、席が近くなることが多く趣味も似通って居たからかもしれない。当時は、それが恋愛感情だということは分からなかったとは思うが。
 彼女とは色々なことを話した。好きな本のこと、食べ物のこと、勉強のこと、友達のこと、そして家族のこと。
 互いに薦めた本を読み合って、感想を言って笑い、食べ物の話をしてその日の給食のメニューが気になり、勉強の話は多少の熱の差はあっても、まあ概ね有意義だった。友達の話をして、実際に会って、共通の友達になった子もいる。
 家族の話は、彼女が嬉しそうに話すのを聞いていることが多かった。俺は、自分の家族があまり好きではなかったので多くは話さなかった。代わりに、彼女が大好きな家族の話を聞くのがとても好きだった。その時の彼女の心からの笑みが、とても好きだった。
 そして、学年が上がってひと月経った頃、あの噂が流れた。
 それが広まった日、教室は恐ろしい空気が流れていた。息苦しかった。周囲から紺野さんに注がれる視線は、恐怖と嫌悪、悪意。当時、通路を挟んで紺野さんと隣だった俺は何日かは、その空気に抗って彼女の近くに居続けた。怖くはなかった。寧ろ、怒りを感じていた。何故なら、彼女がキャリアだという病気については、去年の今頃学んだものだったからだ。それによれば噂で流れているような「吐いた息で感染する」だの「触ったものに触れたら感染する」などというものが専らの嘘だということは明白だからだ。おかしいと思った子も居なくは無い。しかし、その時の噂の効力は強すぎたのだ。デタラメが真実になった。
 俺もまた、親にそのデタラメを洗脳するように吹き込まれ、当時それに抗う術を持たなかった俺は、理性と相反するように行動してしまうようになった。ただ、心が弱かった故に。
 紺野さんがやがて、フェードアウトするように居なくなった後、俺は激しく後悔した。最後まで彼女の悲しそうな目で俺を見る姿が消えなかった。例の発作が時折起こるようになったのは、この頃からだ。しかし、それもまた時が経つにつれ頻度が減っていき、よっぽどのことが無ければ起こるようなことは無くなった。

「……俺は、謝りたいです。ユウキさんに言っても仕方ないし、ユウキさんはこんな俺のことなんか、もう見たくはないかもしれないですけど、それでも……」

 つらつらとそんなことを語る俺をユウキさんは黙って見ていた。見透かすような視線ではなく、俺が何を語るのかそれを問うような視線だ。

「それでも……ごめんなさい。俺は、ユウキさんのお姉さんを裏切りました」
「…………そう」

 病院近くの公園に一旦寄り、そこで並んで座って話していた。乾いた喉をペットボトルの水で潤し、
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