一章 小さき魔物 - 海竜と共生する都市イストポート -
第11話 飛竜 対 海竜 (1)
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願いしようと思ったとき――。
シーサーペントの頭ががやや上方を向いた。
直後に、咆哮。
体の隅々まで振動を感じるくらい、大きなものだった。
一斉にビクンと反応する、人間たち。
「来るぞ!」
誰から発せられたのはわからないが、その叫び声とともに、人間たちに一層の緊張が走る。
立ち上っていた四本の水の渦が、水面から高く浮上し、斜めに傾いた。
その先端は鋭い。まるで、高速回転する水の槍――。
再度の咆哮。
その水の槍は、冒険者たちの頭上を高速で飛んでいった。
そして着地点を確認すべく、彼らが振り向こうとした途中に鳴った、大きな破壊音。
「……」
シドウもその水の槍の行方を追ったが、そこにピントが合ったときには、まだ残っていたはずの建物が消滅していた。
すでに瓦礫と化していた倉庫街の、さらに後ろ。そこにあった商館などへ命中したようだ。
中の人間が避難していたかどうかは……わからない。
だが、避難していなければ即死ということだけは間違いない。
「ティア。話をするから、他の冒険者のラインまで下がっていて」
「……うん」
すでに体勢を立て直して射撃を再開しようとしていた、自警団と冒険者たち。
シドウはその中に自警団のリーダーがいることを確認すると、その男に頼んで射撃をストップしてもらい、シーサーペントに近づいていった。
シーサーペントも、近づいてくる一人の姿に気づいたようだ。じっとシドウの姿を見つめる。
シドウはギリギリまで近づき、見上げた。
「あの! 聞こえますか!」
「……」
「どうして攻撃したのですか。まだ回答待ちだったはずです」
見下ろす海竜のその目。そこには、狂気や怒りといった類の感情は一切こもっていなかった。
だが、その代わりにこめられているものも、シドウにはよくわからなかった。
「回答、もらった、汚す、やめない、と」
「もらったって……誰からもらったんですか」
「人間」
「……!」
確かにその回答に決まっていた。しかし、シドウはまだそれを伝えていなかった。
予定ではそれを伝えたうえで、矛を収めてもらえないかどうか、最後のお願いをするつもりでいた。
だが、共用語を使える何者かが、回答を先に伝えてしまったのだ。
しかも、おそらくあまり良くない形で……。
「まだ間に合うかもしれません。今回は退いてもらえませんか」
「汚す、やめるのか」
「それは……やめられないことになりました」
「なら無理だ」
「誰に何を言われたのかは知りませんが、あなた一人でこの都市を相手にするのはさすがに無理だ。いずれは力尽きるでしょう。撤退して他の安全な海へと行ってもらうことはで
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