第二話『兵藤家の人々』
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小学生時代の家が既に無くなっていたので、配属先の先輩である家の父さんが厚意で下宿させているのだったりする。
「まあ、真面目に言うと──かくかくしかじかって訳さ」
「まるまるうまうまにゃん」
「ふむ。神器所有者の命を狙った堕天使≠ニは、イッセーも面倒な輩に言い寄られていたものだな」
「そう言う曹操は、小学生の時には同級生の男≠ゥら言い寄られていたよな?」
何でも、その男は名前を逆さから読んではいけないらしい。
「うわあああああっ!? ヤツ≠フ事は思い出させるなイッセー!」
頭を抱えて喚く曹操。どうやらこの事は治療不可能なトラウマらしい。
「もちつけ」
「おら、餡ころ餅が食べて〜にゃん♪」
「やかましい!」
大声を出した後、溜め息を一つ吐いて気持ちを落ち着ける曹操。
「──で、明日はグレモリーからの呼び出しか」
「まあな。序でだから黒歌の妹の様子も見ておくよ」
「イッセー、感謝するにゃん!」
実は黒歌には生き別れの妹が一人居て、現在はリアス=グレモリーの眷属≠ノなっている。
「──あっ、『桃園モモ』にゃ!」
テレビの映像に気がついた黒歌の声につられて、テレビに目を向けると──画面には俺の母さんが歌を歌っている姿が映っている。
母さんは、現役女子高生でも通じるその若作りの容姿で、現在は『桃園モモ』という芸名で芸能界で特撮ヒーロー番組の美少女主人公やアイドル歌手として活動をしているのだ。正体を知っている身からすると立派な詐欺である。
因みに母さんは現在、国許に居る二人の妹分を巻き込んで、三大国鼎立初期に中国に実在した伝説の歌姫三姉妹『役満☆姉妹』に肖った『桃園☆姉妹』の結成を目論んでいる。
──テレビは『桃園モモ』の歌が終わるとCMに入った。
「これ録画?」
「リアルタイム生放送にゃ」
「あ、そうだイッセー。先輩からの伝言で、帰ってきたら道場に顔を出すようにとの事だ」
曹操が思い出したかのように、父さんからの伝言を伝えてきた。
「了解。曹操、伝言サンキュー」
俺は冷めたお茶を一気に飲み干して立ち上がり、道場へと向かった。
剣道場──。
俺が道場の中に入ると、稽古着姿の父さんが中央の床の上に正座をして佇んでいた。
家伝の〈兵藤流闘殺法〉は、若い頃の父さんが『異世界(俺のとは別の)に魔王退治の為に片道召喚(帰還は自力で、幾つもの世界を経て)されて、冒険をしながら実戦の中で編み出した武術』で対魔物用の技が多数を占めている。武器は剣を基本に槍・斧・鞭・ブーメランなどの他にも色々な物を扱う。
稽古は、朝は基本の鍛練で曹操らも参加しているが、夜は身内のみで秘伝の伝授を行っている。
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