第73話 零
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を隠すように俯いた。
無愛想なヤツねぇ
中学生くらいかしら
そんな様子に女性の研究員が注意をして無理矢理腕を掴んで立たせようとした。
「こーら、ちゃんと挨拶しなさい」
「あっ!や、やだぁーーーー!!!」
病院の患者着衣が乱れて露わになる感覚が先行して少年は絶叫して防音設備が完璧な部屋に響く。
「うるさいわねぇ。男のクセに女々し......!?」
少年の胸部には似つかわしくないシリンダーのような機器が埋め込まれており、身体の至る箇所に管が走っていた。
「みない......で」
少年は着衣を抱き寄せるように執拗に着込んで幾何学模様の瞳から涙を流しだした。
「あら、まあ説明の手間が省けたわね。彼は生まれつきある病に冒されていてね。身体に埋め込まれた機器がないと生きていけないの」
前例のない特殊な呪いに近い病で心臓に悪魔のような目が浮かび上がり、徐々に眼から伸びる糸で締め付けられていく。
それを抑制する為の装置だが発作の感覚が短くなり、ただ徒らに生きさせる事に近い。
無論、前例がない為ので治療法はない。
定期的な発作とは別に施設からの脱走や自殺しようとすると強い締め付けを起こして意識を失わせる。
まるで彼の意思とは別に死さえも操られているかのような呪い。
うっう......うぅ
あまりにも過酷な少年の姿に食蜂は言葉を無くして黙って見守る事しか出来なかった。
彼はすすり泣くように部屋の隅で丸くなって顔を伏せていた。
女性研究員が食蜂と少年を二人きりにさせるように出て行ってしまった。
食蜂はあの光景を見てしまいどう反応して良いのか考えてみるが、衝撃の度合いが強過ぎて一定の距離を保って静かに壁を背にして立っている。
「ごめんね。きもち......悪かったよね」
絞り出すように少年は言葉を選んで慎重に言い出した。
すぐに割れてしまうような、壊れてしまうシャボン玉のように
「別にぃそんな事......」
「ううん、しょうがないよ。僕にも......お友達いたんだ」
外に出れない僕の所に毎日来てくれて
色々お話してくれて
いっぱい遊んでくれた
でもこの身体を見られちゃって
次の日から来てくれなくなっちゃった
なんでこんな身体なんだろう
たったひとりの友達にも気味わるがられて
また逢いたい
もう独りは嫌だ
どんな言葉を掛けても無駄だと察したのか食蜂は彼が落ち着くまでじっとその場に居続けた。
同じ研究施設に居るのに知らなかった存在
人間のようで人間ではないような幽かな存在
1時間だけの面通しを終えて食蜂が部屋の外に出るとまたしても顔を隠しているラグビーボール頭の研究員に囲まれた。
皮肉にもこの頭と冷淡な説明の仕方に、先ほどの彼の方がずっと人
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