第73話 零
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ずっと前、小さい頃から精神能力に秀でていた私は常に監視されて育った。
周りにいるのは私の精神能力の影響を受けないように付けているラグビーボールのようなメンタルガード。
宇宙人のような出で立ちにさほど興味もなく淡々と自分の能力を磨き、淡々とあどけなさを演出しながら研究データを提供する日々。
シャリ
しゃくしゃく
しゃくしゃくしゃくしゃく
ごっくん
「今君が食べているのは何かね?」
「え?メロンじゃないですか。見れば分かるでしょ」
しかし、テーブルの上にあるのはメロンではなく何の品種改良もしていないリンゴだった。
ラグビーボールのような機器を取り付けた中年男性はまるで数学の定義でも確認するかのように『好きな食べ物』という幼稚な質問をしていく。
研究員の男性は躊躇も嘘もなく自分がそう思った事実を述べたに近い。
「君が苦手な食べ物は?」
「リンゴです!!アップルパイとかなら大丈夫なんですけど、生だとダメなんですよねぇ」
あっけらかんに想定通りの回答に満足したのか機器を頭に付けた男性は傍らに座ってリモコンを持って退屈そうにしている金髪少女に指示を出した。
「フム......食蜂君解いてやってくれ」
金髪少女が星のような瞳でリモコンの停止ボタンを押すと、リンゴ嫌いでリンゴを普通に食べている男性の挙動が止まった。
今まさに咽頭に流し込もうとしたリンゴの正真正銘のリンゴのベタついてザラザラした甘みが脳天に揺さぶりを掛け始める。
「むぐッ!?うげッ、ゲホッゲーーーッ」
リンゴを食べていた男性は口を抑えながら手近にあるゴミ箱に向かってすり潰されたリンゴを吐き出した。
リンゴをリンゴと認識しただけで凄まじい勢いで胃を始めとした身体全体がリンゴの吸収を拒んでいるかのようだ。
「こ、これってひょっとして......」
「ああ、彼女の能力だ。君はリンゴをメロンと誤認させられていたんだよ」
少女は研究員の滑稽な姿なんて意も介さないかのように大きなあくびをした。
だがそんなある日、研究施設の曲がり廊下をラグビーボールのような頭部をした宇宙人のような姿の女性研究員に連れてこられてある一室の扉をカードキーで開けた。
?
別フロアに入るのは初めてねぇ
普段決められた部屋と部屋を移動することしか許されなかった食蜂は違う部屋の風景をもの珍しそうにキョロキョロした。
「紹介するわね。零号(プロトタイプ)通称『ララ』よ」
沢山の玩具に囲まれている黒髪の癖っ毛が強い同年齢の男の子が瓶の中にある小さな植物の芽を持ってこちらを怪訝そうに見上げていた。
その眼には不可解な幾何学模様の万華鏡写輪眼が燃えるように瞳を中心に沈んでいた。
プロトタイプぅ?
それに変な目ね
黒髪の少年は長めの前髪で眼
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