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とある科学の傀儡師(エクスマキナ)
第73話 零
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深夜2時
住んでいるマンションの一室で白衣を着たままソファで泥のように眠っていた木山春生が寝苦しさを感じて目を覚ました。

サソリ派に入った事で多少はリフレッシュ出来たがなにぶん新学期がスタートし罪を償う意味合いの強い学生の能力データの収集と整理がまだまだ残っている。
研究室で夜遅くまで作業した後に自宅でも続きをする為に缶コーヒーを自動販売機で購入して臨んだが、摂取しまカフェインよりも疲労が打ち勝ったらしく横になってしまった。

まだ机の上には目を通していないファイルが雑然と置かれており、カバンの中にもまだまだある。

じっとりと湿度が高い寝苦しさを感じながら喉の渇きを覚えたのとカフェインによる中途半端な覚醒作用にあまり気分の良い目覚めではなかった。

「ゲホ」
ジメジメとし、吸い込む空気には湿り気があるにも関わらず乾いたガラガラ声で咳をする。
電気を点けずに暗闇のまま水道に向かいガラスのコップを戸棚から取り出すと水を入れて一息に飲み干した。

更に半分だけ注ぐと自分の汗でベタベタとした服を不快に思い襟首から申し訳程度開いて換気をしてみるが清涼感とは程遠い。
我ながら行儀悪いなと考えてコップ片手にリビングに移動してくると机の上に置いてあるノートパソコンのランプが点灯しているのに気付いた。

一応仕事の続きをしようとして電源ボタンを無意識的に押したのだろうか?

折り畳まれたノートパソコンを開き、マウスを動かすと2年前に撮った教え子達の写真がロック画面として出現した。

自分の誕生日を祝ってくれる際に撮影した写真だ。図らずもそれがこの子達とまともに共に映った写真だ。

まだ目元の隈は今よりも軽く血色が良い気がする

あの日から木山の時間はこの画面のようにロックされたままだ。
凄惨な実験を忘れないように加担しないようにの戒めでロック画面に採用して開く度に自分へと問いかける。
飲み干した水が銀のようなザラザラな味になり少しだけせり上がってくるような吐き気が強くなる。

いつもまともに寝れないな

パスワードを打ち込んでロックを外すと何故かある一通のメール特有の白い画面が既に開かれていた。
ほぼ毎日パソコンの電源は入れているので疲れていても普段の習慣から点けてしまうのは分かるがパスワード設定がしてあるメール画面を開くというのはどうも考えにくい。

ここまでする体力があるならシャワーを浴びる事も出来そうなものだ

背中に一つだけ大きな汗がサーっと流れていくのが伝わる。
何が訴えているのか?
それとも汗だけが逃げ出したのか?

カフェインのせいで半覚醒した頭で文字の読解に挑んでいくが木山は差出人の名前を見てみるみる頭の中がグシャっと音を立てて戦慄し始める。

差出人 協力者
件名 覚え
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