MR編
百四十五話 失えど
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らってばっかりで、ごめんね……ごめんなさい……!!!」
許せなかった。ずっと隣に居たのに、何一つ気が付きもしなかった。気が付こうともしなかった、彼女が何かの薬を飲んでいたのに気が付いていたのに、「何でもない」と言う彼女の言葉だけを鵜呑みに、それ以上気に留めもしなかった。彼女が時折貧血を起こすことに気が付いていたのに、それが重病のためかもしれないなどと考えもしなかった。彼女がずっとずっと苦しんでいたのに、その苦しんでいた彼女から、自分は何一つ返すこともせずに、癒しを貰い、楽しさを貰い、居場所を貰い、生を貰っていた。
たった一人の友人だと思っていた。自分は彼女にもらってばかりだけれど、それでも隣に立てるようにあろうとしているつもりだった。けれど、全くそうではなかったのだ。
彼女は死と戦い、自分はそんな彼女に支えられて生を享受していた。隣どころではない、同じ舞台の上にすら、自分は立てていなかったのだ。
「こんな、こんな私が、と、友達なんて、そんなの……「違うッッ!!!!!!!!」ッ……」
その、合唱部で鍛えられた圧倒的な声量から生まれる剣幕に、思わずビクリと身体を硬直させて、美幸は黙らされる。顔を見ることもできなかった千陽美は、泣きじゃくる美幸の顔を真っ直ぐに見て……涙を、流していた。
「違う……そうじゃないよ……ウチが……ずっと黙ってたの……美幸にどう思われるか、怖かったから……」
「ちよ、ちゃん……?」
「ウチの小学校の友達ね……私が病気だって知ってから、私の事避ける子が多くなった……なんでかはわかんない……でも、凄く悲しかったし、苦しかったの……病気よりも、病気の事知った人が、私から離れて行く方が、ずっと怖いの……!!」
「…………」
「だからウチ、美幸にだけは絶対に病気の事が伝わらないようにってしてた……お母さんにも先生にも、絶対に言わないでって口止めしてた……!美幸にも避けられたら私……耐えられないって……!ゴメン……ごめんね美幸……!私、友達だって言いながら、本当に心の底からは、美幸のこと、信じ切れなかった……ずっと、ずっと美幸の事、疑ってたの……!!」
まるで絞り出すような、苦しい、苦しい声だった。そして同時に、何かをどこまでも恐れるような、弱弱しい声だった。うつむいた彼女が、縋りつくように美幸の肩をつかみ、震えながら、彼女の背に手を回す。
「黙っててごめん、あやまらせてごめん……「強くなくて」ごめん……!全部謝る、でも、だから、だからお願い……!美幸……離れないで、傍にいて……!ウチを避けないで、見捨てないで……一人に……ッ、ウチの事、一人にしないでぇ……!!」
「…………」
美幸は何も言わなかった。ただ、ただぎゅっと、自分に縋りついてきた彼女の身体を優しく抱き返した。
「……私が、傍に居ていいなら……
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