MR編
百四十五話 失えど
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く!!いこっ!」
「うんっ!」
それが麻野 美幸にとっての、佐川 千陽美だったのだ
今にして思うと彼女との関係は……二人の間では一度もそんな風に言ったことはなかったけれど、自分にとっては、「親友」と呼べるそれだったのかもしれない。
2021年11月 麻野美幸 15歳
「えっ?入院……ですか?」
「えぇ、それで……あ、麻野さん!?」
だというのに……そう思うほど、大事な友人だったというのに……
「佐川さんですね?では……204病棟の8号室になりま……あ、ちょっと!?」
「ッ……!」
その日、その時まで、美幸は彼女の事を、真に理解することはできなかった……決して、出来なかったのだ。
「あ……美幸、来ちゃったんだ……」
「ちよ……ちゃん……」
彼女が入院したのは、文京区にあるとある病院だった。白いベッドと部屋に囲まれ、傍らに見舞いに来た人の物だろう花を置いて困ったように苦笑するその姿は、普段が制服姿だった所為もあってか、それまでの彼女からは信じられないほど、はかなく、弱弱しく見えた。
「……はっ、けつびょう……」
「うん、私の病気」
結論を言うと、佐川 千陽美は、慢性白血病と言う重い病を患っていた。小学生の頃に発症したそれは、慢性型と呼ばれる物で、中学生になる前あたりから飲んでいた薬のおかげもあって、小康状態を保っていたらしい。しかし、ここにきてついに、症状が一気にぶり返したのだという。
「治すの難しいんだってさ、この病気。って有名だし、知ってるよね〜」
「…………」
造血幹細胞移植、という方法が取れれば、白血病の治療が可能だというのは、美幸も知っていた。しかしその方法には、細胞同士の相性が必要らしく、いわば偶発的に自然発生する特効薬とも言うべきそのドナーが見つからなければ不可能な方法だ。だが後で聞いた話では、彼女の白血病は近年に見つかった薬剤耐性の強いもので、既にこの時点でそれ以外の方法で治療は殆ど不可能だと言われていたらしい。美幸の細胞も検査したが、彼女の物とは適合しなかった。
「まぁ、そんな深刻な顔しないで!まだウチ、死ぬって決まったわけじゃないし!」
「…………」
「もう、美幸が暗い顔してもしょうがないって!ほら、顔上げてよ、ね?」
「……ごめんね……」
「みゆ、えっ?」
「……ごめんね、ごめんね、ごめんねごめんね……!!」
「ち、ちょっと美幸?どうしたの急に……謝るなら、隠してたウチの方……」
「私……知らなかったっ、ずっとちよちゃんは苦しんでたのに、知らなかった、気が付いてあげられなかったっ……私ばっかりずっと笑って、ホントは、私がちよちゃんにしてあげなきゃいけない事、沢山だったのにっ、私、ちよちゃんからもらってばっかりで……!!ずっと、何もしないで、自分勝手に笑って、も
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