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SAO─戦士達の物語
MR編
百四十五話 失えど
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ミュニケーション能力の低い美幸にとってはそれは天から降って沸いた幸いにも等しかったのだと思う。だから初めの内はいつも彼女に頼りきりだったし、彼女が誘ってくれた部活も、元々(自覚はなかったのだが)歌がどうも得意だったらしい美幸にとっては性に合っていたようで、千陽美を通して、あるいはそれ以外の人々との繋がりも徐々に増えていき、部活にもクラスにも、美幸は居場所を見出すことができるようになっていった。

「美幸っ、一緒に帰ろ!」
「うんっ」

「そう言えば、美幸は進路希望、なんて書いた?」
「私は、今は近くの普通科の高校かな……将来の夢とか、よく分からないし……千陽ちゃんは?」
「ウチは、音楽系の学校に進もうと思ってるから、そっち系」
「えっ、ちよちゃん音大に行くの?」
「今はまだ夢だけどね、ウチ、オペラ歌手になりたいの!」
「オペラ……!?」
「うん、子供の頃、一回連れて行ってもらって、言葉やお芝居の意味はよく分からなかったけど……凄く、凄くて!ウチもあんなふうに舞台に立ちたいって、そう思った!」
「そっか……だから、合唱部?」
「うん、ホントはスクールとかに通うのも考えたけど……でも、同じ学校のみんなと合唱するって、今しかできないでしょ?だから、それも諦めたくなくて……」
「そっか……うん!きっとなれるよ、ちよちゃんならきっと!」
「へへ……ありがと!」
ただ、友人が増えても、千陽美と美幸は互いに離れようとする事はなく、むしろ時を追うほどに、一緒に居る時間は長くなっていったように感じる。三年間ずっと同じクラスだったせいもあって、三年生になったころにはクラスでも部活でも何時も一緒。中学時代の三年間を思い返すと常に彼女の笑顔が浮かんでくるのは、誇張ではなく、本当にいつも彼女が隣に居たからだ。

「すーっ、はーっ」
「……き、緊張するね……」
「三回目なのにね。けど、大丈夫大丈夫、今までで一番出来る、きっとそう」
「うんっ……頑張ろうね」
「おぉ、美幸がやる気だぁ」
「えぇっ?」
「ふふ、昔だったらもっと泣き言いってたのにねぇ」
「む、昔の話だよっ」
「ふふ……ねぇ、美幸」
故郷の友人たちと離れた辛さも、苦しさも、悲しさも、全てをいやしてくれた存在。

「……ありがとね」
「?どうしたの?」
「うーん、急に言いたくなって……、まぁ、あれだよ、何時も一緒だけど、偶にはちゃんと言わないとね?」
「……なら、私もだね……いつもありがとう、ちよちゃん」
あの頃の自分に、「居場所」をくれた恩人、

「……へへ、なんか、恥ずかしくなった」
「ぅう……私もだよ。今から本番なのに……」
「よーっし、この恥ずかしさなら、緊張を多分上書きできる」
「えぇ〜?そんな事ってあるのかな……?」
「そう言うことにしてお
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