MR編
百四十五話 失えど
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ゃんと自己紹介もしてないんだ!!クラスでやったからってそれは失礼だったよね……ごめん!じゃあ、改めて!」
その事実にほどなくして彼女も気が付いたらしく、しまった!と言わんばかりに手の平を額に当てると、即座に彼女は美幸に向き直る。うん、どうせなら、自分が知らないところで自分の予定を決められていた部分に関しても謝ってほしいなぁと美幸はうっすら思ったりしたが、そこはそれ、言わないで置いた。
「佐川 千陽美(さがわ ちよみ)です!!あなたと同じクラス、出席番号は10番!よろしくね!麻野 美幸さん!!」
────
「麻野さ〜ん、練習いこっ?」
「あ、うん」
「コンクールまであと二カ月か〜……麻野さんも、最近は声出るようになってきたよね!」
「う、ううん、私なんか、先輩たちとか、佐川さんに比べたら全然」
「もー、そうやって自分を下に見るからダメなんだよ。音程取るのもコツつかむのも上手いって先輩からも言われてるんだから、自信もって!」
「う、うん、頑張るね……?」
合唱部の活動は、美幸にとって、中学時代その物だったといっても過言ではない。そして同時に、佐川 千陽美は間違いなく、美幸にとって最も大切な友人であり、自分の中学校生活を掛け替えの無い物にしてくれた恩人だったこともまた確かだった。
「わだし、がんばっだのに゛ぃ!!」
「うん、そうだね……千陽美ちゃんも、みんなも、頑張ってたよ」
「みゆぎぃ……!」
「えっと……よし、よし?」
「みゆぎがわい゛い゛ぃ……」
「よしよ、えっ?」
千陽美はどちらかと言うと、自分とは正反対の性格をしていたと記憶している。何事にも積極的で、何時も明るく社交的、言いたいことははっきり言うタイプで、その為にトラブルも時折会ったが、どんな時でも、へこたれることなく全力で彼女はぶつかっていった。そんな彼女の姿に、美幸はある種の憧れを感じていたし、同時に、友人として誇らしく感じてもいた。
「美幸、部活いこう!!」
「あ、うん、ちょっと待って!!ゴメン後……」
「ううん、い〜よ、片付けとく。いってらっしゃい合唱部〜」
「早く早く!私後輩指導なんて初めてだよ〜、千陽美先輩、なんて〜」
「うん、カッコいいね。先輩かぁ……」
「美幸は優しいからねぇ、きっと後輩に人気出るよ」
「そ、そうかな?でもそれなら、ちよちゃんはリーダーだし、ちよちゃんのほうが人気出るんじゃ」
「いやいや、美幸、リーダーっていうのは得てして嫌われるものなのよ、指図ばっかりするからウチだって、緒方先輩やだったもん」
「えぇ〜?もう、先輩に聞かれたらおこられるよ?」
「ふふん、だから、美幸が上手くみんなを懐柔してね!」
「言い方悪いよ!?」
初めは成り行きで知り合った彼女はどういうわけか常に美幸の事を構ってくれて、コ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ