第21夜 択一
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が、これは賭けだ。
光が消え、影が空間を満たしていくのを確認し、トレックはペトロ・カンテラに火を灯した。昨日と全く同じように、カンテラが浮かび上がり、周囲を照らす。セオリー通りの行動だ。但し一つだけ違う点があるとすれば――そのカンテラが付随するのはトレックではなくギルティーネであること。
言葉を交わす必要性はなく、二人は無言で歩き出す。
伝えるべきことはほぼ伝え終えた。後は呪獣に会うだけだ。
予め数えておいた、明かりをともさない外灯をくぐった数を数えながら、ゆっくりとした足取りで歩く。ギルティーネはトレックの指示で、背後ではなく横に付随していた。音のないくらやむの中に、二人の男女の足音だけが響き渡る。
やがて、くぐった外灯の数が10を越えようかとする頃――トレックとギルティーネは別々の意図で、同時に立ち止まった。
刹那――耳を劈くような音をたて、トレックの兜に猛烈な衝撃が叩きつけられた。
「ガぁッ!?」
「――!!」
成すすべもない、一瞬の出来事。
意識が消し飛びそうな振動に視界が漆黒に染まり、歯を食いしばって意識を繋ぎとめても体は着いてはいけない。トレックは無様に地面に倒れ伏し、被っていた兜がカラリと音を立てて地面に転がる。次の一撃を受けた瞬間、トレックの魂は闇に呑まれ、消え去る。
考えれば、予想出来ていた筈のことだった。ここはガルドが殺された場所で、トレックが敵の気配を感じて立ち止まった場所。そしてこの呪獣はカンテラから離れた人間を狙う。すべての条件は揃っていた。
――そう、すべては『トレックの推論通りに進んだ』。
トレックは考えた。上方から攻撃を受けたことに疑いはないが、それにしては現場に死体が残らないのも血痕が異常に少ないのも理由が分からないし、単に捕まっただけなら訓練された準法師は決死の抵抗を試みる筈だ。しかし、これまで集めた情報では一瞬で姿が消えたことと血は上から下に落ちたことしか判明しなかった。
ならば、死体は上へと昇っているのは確実。死体が出ないのは呪獣が食っている――恐らく丸呑みだ――から。
では抵抗できずに死んでいるのは何故か?
導き出した結論は、『最初の一撃で即死、もしくは思考が出来ない状態にされている』。
すなわち、一撃で頭部を破壊し、その頭部を掴んで引き上げている。
だったら防げばいい。そして攻撃を仕掛けた瞬間、相手の正確な位置が割れる。自分の役はあくまで囮――本命の攻撃は、パートナーの力量を信じてすべて託した。
「……ぐっ、ギル、ティーネっ、さんッ!!」
「………………!」
トレックが叫んだその時には、既にギルティーネはペトロ・カンテラを用いて呪法を発動させていた。恐らく人間ならそれに気付け、呪獣には決してそ
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